【寄稿】ホンマに大変! 上下水道事業の官民連携(中)

地に足をつけて考えよう 深澤哲・クリアウォーターOSAKA常務取締役

上下水道サービスを持続させるために、官民連携への期待が高まっていますが、軌道に乗せるためには、実際に取り組んでみなければならない課題や苦労があります。やってみなければ分からない、そんな考察について、大阪市から全面包括業務委託を受けて下水道施設の運転管理を行っているクリアウォーターOSAKA株式会社の深澤哲常務取締役からの寄稿を3回にわたってお届けしています。

官民連携にもいろんな手法がある

給水管(深澤氏提供)

このような状況の下で官民連携手法の活用が、有識者やシンクタンク、コンサルなどからも提言されてきています。1999 年に公布された PFI 法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法)や指定管理者制度、さらには「公共施設等運営権」を用いた枠組みなど、様々な事業スキームが議論されています。大阪市の下水道事業が採用している全面包括業務委託(コントラクト・アウト方式)も、1つの官民連携のスキームです。

中でも「公共施設等運営権」を活用した方式(以下では、運営権方式)が、コンセッション(=事業権譲渡方式)の1形態と称され、インフラ関連事業での民間参画の有力な方式として注目されてきました。

実際に、浜松市西遠下水処理場には運営権方式が導入され民間への委託が行われましたし、高知県須崎市や神奈川県三浦市の下水道事業でも、導入準備が進んでいるとのこと。政府も同方式の導入促進のために、資金支援も含めて様々なサポートをしているようです。

小規模自治体は直営が多いフランス


大阪市市岡下水処理場プラント内部(深澤氏提供)

この公共施設等運営権方式は、「利用料金の決定等を含め、民間事業者による自由度の高い事業運営を可能とすることにより、民間事業者の創意工夫が生かされ、既存インフラの価値が高まり、利用促進が図られることにより、公共施設等の管理者等(以下「管理者等」という。)、民間事業者、利用者の三者にとってそれぞれ有益なものとなることが期待される。(内閣府、公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン、以下ではガイドライン)」と説明されます。

先進地として紹介されることが多いフランスでは、下水道事業の 53%が、日本での運営権方式を含めた様々な民間委託(DSP:公役務の委任)によって民間事業者に担われているとのことです(内閣府、2017 年 10 月、欧州等の⽔道分野における官⺠連携制度と事例の最新動向について)。

しかし別の調査(日本下水道新技術機構)では、事業件数で調べると DSP を採用しているのは対象数 15,781 件の中の 22%(2016 年)とのこと。この違いは、内閣府は DSP が採用されている割合を人口で表していたから生じたもので、規模の大きい自治体でDSP が採用されていることが多いことによるものです。

このことは「人口規模が大きい団体では民間委託されることが多い一方、小規模なコミューンでは公共により直営される割合も多い。(内閣府、2016 年 8 月、フランス・英国の水道分野における官民連携制度と事例の最新動向について)」、すなわち民間事業者にとっても「事業運営を責任をもって行い、適切な対価を受け取る対象として、規模の小さい自治体は当てはまりにくい」ことを意味するのだと推察します。

人口5万人未満で検討される運営権方式


大阪市市岡下水処理場の処理槽(深澤氏提供)

日本でも運営権方式の水道事業への導入がいくつもの自治体で検討されているようです。内閣府による「平成 28 年度上下水道コンセッション事業の推進に資する支援措置」の対象になった自治体(全 12 件)には、先述の下水道事業での須崎市や三浦市の他にも、上水道事業では伊豆の国市(静岡県)、木古内町(北海道)、村田町(宮城県)なども選ばれていました。

上に名前を挙げた自治体の人口は、いずれも 5 万人未満。一番大きな伊豆の国市で 4 万 9,000人、木古内町になるとわずかに4,000人です。こうした自治体の課題とは、効率化もあるのでしょうが、「事業継続への懸念」がはるかに大きいのではないでしょうか。その観点から民間事業者の支援を期待して、運営権事業の導入検討に応募したのだと推察します。

しかし先進地フランスでも、小さい規模の自治体は直営が多い。つまり、運営権といった事業の対象とはなりにくいのでしょう。目的のための解決ツールとしては適用が難しい、と考えるのが素直な解釈かと思います。
「それでは大きな自治体ならば適用できるのか」となると、世間ではあまり表だって議論されていない解決すべき課題があります。その中のいくつかについて、次に説明します。

(つづく)


寄稿者:深澤哲・クリアウォーターOSAKA株式会社常務取締役 

1982年日本開発銀行(現株式会社日本政策投資銀行)入行。日本経済研究所インフラ本部長および一般財団法人都市技術センターの常務理事として、国内外の上下水道や電力などインフラ分野での事業制度設計等に従事。大阪市下水道事業の上下分離には構想段階から関与してきた。株式会社大阪水道総合サービス取締役。2017年4月より現職。

※本ペーパーでの意見や見解は深澤氏個人のものであり、所属する組織のものではありません

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