5社の上下水道コンサルティング会社トップに、PPP戦略を聞いた。
日水コン
日本水工設計
東京設計事務所
パシフィックコンサルタンツ
NJS
作るための公共工事が減ることへの危機感は共通しており、先細りが避けられない従来型のいわゆる“設計コンサル”から脱却すべく手を打ち始めている点も同じである。ただし、手の内はそれぞれ異なる。各社の戦略を整理分類し、今後の市場を考えてみよう。
マトリックス分析で見えてきた各社の戦略
(筆者作成)
取材を通して明らかになったことが2つある。
1つは、上下水道に軸足を置く会社と、上下水道に軸足を置きつつも他の公共サービス・社会インフラに事業展開を図る会社に分かれるということだ。
そしてもう1つは、官や元請け建設会社などサービスプロバイダーをサポートするか、自らがサービスプロバイダーになるかの違いである。
前者は事業領域の視点であり、後者は業態の視点である。この2軸でマトリックス分析を行ったものが図である。
横軸が事業領域で、左ほど上下水道専業で、右に行くほど電力やまちづくりなど他の社会インフラとの融合意欲が強いことを意味する。一方、縦軸が業態で、下に行くほどサービスサポート型で、上に行くほどサービスプロバイダー意欲が強いことを意味する。
サービスプロバイダーは建設コンサルがリード
まずは右上の象限B<社会インフラ・サービスプロバイダー型>に着目しよう。ここにはパシフィックコンサルタンツを分類した。
同社は取材した5社の中で唯一の建設コンサルタントであるため、発想が上下水道に縛られることがなく、他の社会インフラとの融合は他社よりも図りやすそうだ。
すでに「道の駅」の運営をはじめ、電力小売り事業の収益の地域還元、高松空港コンセッションなどの実績がある。それら事業と上下水道サービスとの融合はこれから。手始めに電力小売りの収益を上下水道事業に還元することに意欲を見せている。
サービスプロバイダーへの挑戦
左上の象限A<上下水道専業・サービスプロバイダー型>には、日水コンを分類した。設計コンサルから上下水道サービスプロバイダーへの変革の途上といったところだ。とはいえ、昨年11月に下水道管渠の更生工事を元請けとして初めて受注し、サービスプロバイダーとして着実に歩を進めている感がある。
東京設計事務所は、象限Aの中でもサポート寄りに分類した。今はグループ会社「アクアパートナーズ」を設立し、上下水道分野でサービスプロバイダーとしての実績づくりを狙っているところだ。
両社に共通することは、上下水道分野を飛び出し、より広範囲な社会サービスプロバイダーに関心を示していることだ。これは裏を返せば、上下水道だけのサービスプロバイダーは成立しにくい、つまり採算がとりにくいということの表れと言えるのかもしれない。
ただし両社とも、これからいかに象限Bに遷移するかは課題として残る。自力で無理なら、異業種との連携が不可欠になろう。
そうした中でも注目したいのは、東京設計事務所が民需に触手を伸ばしていることだ。グローバル企業の水リスク対応を評価するCDPウォータープロジェクトのスコアリングパートナーになった。これまで民需と官需は異なる市場と考えられてきたが、水リスク対応という視点で見ればどちらにも類似のニーズがある。そして、いずれもまだ形成途上の新規市場である。潜在顧客と潜在ニーズを掘り起こし、民需と官需を融合させた新たなビジネススキームを生みだすことに期待したい。
サポート企業には“武器”が不可欠
左下の象限<上下水道専業・サービスサポート型>には、日本水工設計とNJSを分類した。
両社とも設計コンサルから脱皮し、行政が策定する長期計画などより高次の政策判断に関わっていこうとしている。その際の武器として、日本水工設計はアセットマネジメントを装備し、一方のNJSはソフトウェア開発を強化している。
サービスサポート市場を勝ち抜くには、両社のように何らかの特徴的かつ強力な武器が不可欠になりそうだ。
(MizuDesign編集長:奥田早希子)
※「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています