【PPP新戦略】デジタル技術で上下水道を変革

NJS、村上雅亮社長に聞く

平成30年2月13日に中期経営計画を改訂し、デジタル技術による上下水道の生産性向上に取り組むとした。同27日には経営コンサルティング部の発足を発表し「変革」を印象付ける施策を相次いで打ち出している。NJSの村上雅亮社長にその狙いを伺った。

村上雅亮氏(株式会社NJS 代表取締役社長)

現在の延長線上にない手法を生む

 ――デジタル技術に着目した狙いは。

「AIやロボティクスなどデジタル技術による社会・産業の変化が加速している。そうした技術を上下水道システムに適用し、生産性向上やサービス向上につなげることはコンサルタントの重要な機能だと考えている。このため企業コンセプトとして『水と環境のコンサルティング&ソフトウェア』を打ち出した」

――これまでにも上下水道では遠隔監視などICTは使われてきた。違いは。

「近年のデジタル技術はAI、ビッグデータ、インターネットを活用して意思決定や管理を効率化する方向に向かっている。ここが個々の作業の効率化を目的にしてきた従来技術と大きく違う点だ。システム全体の理解が不可欠であり、ソフトウェアの重要性が増す。また、インフラ管理の分野ではライフサイクルを通した管理に移行しつつあり、対応したソフトの整備が必要になっている。当社ではライフライクルを点検調査・解析診断・修繕改築・運転管理・災害対策・運営管理の6つのステージに分け、ステージごとにソフトウェアを位置付け、関連サービスとともに提供していく。

設計の生産性向上と建設・維持管理との情報連携を目的としてBIM・CIMの活用を強化している。ビジュアル効果や工期短縮だけでなく、品質管理や施設情報管理に活用していきたい。上下水道システムにおけるCPS(サイバーフィジカルシステム)構築を目指したい」

デジタル関連の開発投資を倍増

――上下水道のPPPの推進においても、デジタル技術は重要な要素だ。

「官民連携事業では、事業を効率化し、サービス品質を改善することが民間の役割であり、そのために欠かせない要素がデジタル技術の活用だと考えている。

上下水道事業の効率化のためシステムのデジタル化を図りこれを維持管理していくことは、個別の自治体では技術的にも人材的にも難しい。デジタル化による事業効率化のためにもPPP等の官民連携事業の推進が必要になっている。そこを当社が対応していきたい。

プログラミングやセンサー、AI、ネットワーク、ロボティクスなど、デジタル技術のすそ野の広さに対応できるよう社員を増強している。開発投資もこれまで毎年2~3億円ほどだったが、今期はこれを倍増した」

――注力する技術は。

「ソフトウェア開発とドローン開発に投資していく。特にドローンについては、平成29年10月にドローン開発部を設置し、関連技術も含めて開発を強化している。管路内というGPSが届かない空間でも、自動点検できるドローンを開発しており、今後は処理場など多様な閉鎖性空間のインフラ点検に広げていく。

また、ドローンの画像をもとに、AIが優先的に修繕すべき箇所を割り出す画像解析にも着手している。そのためには、4Kなどの高精度な画像データを収集する必要があり運用を急ぎたい。

この技術が確立すれば、管路等調査の工期短縮、コストダウン、作業安全につながる」

――ビジネスモデルは?

「ドローンの機器販売そのものでの収益よりは、関連するソフトウェアや、コンサルティングサービスでビジネスの拡大につなげたい。

一方、ソフトウェアについては、これまでコンサルティング業務に付属する位置付けだったが、今後は独立したビジネスの確立に向けて強化していく。クラウド型サービスパッケージソフト『スカイスクレーパ』については現在、7つ(管路情報、施設情報、運転監視、雨量情報、料金収入、企業会計、固定資産)のアプリケーションサービスを内包しているが、この機能拡張と販売強化を図る。また下水道のストックマネジメントソフト『管路カルテ』を低価格で提供しており、普及に努めたい。

平成29年に、カナダのソフトウェア開発企業エンバイロシム社と、日本における同社開発ソフトの独占販売代理店契約を締結した。同社の下水処理シミュレーションソフト『BioWin』は水処理から汚泥処理まで機能が充実しており、計算スピードが速いことが特徴となっている。世界的に高い評価と実績を有している。その日本語版を年内に発売する」

目指すは新しい産業の育成

――平成30年2月27日に、経営コンサルティング部を設置すると発表した。

「当社では平成17年に業界に先駆けて経営工学研究所を設立し、上下水道の経営問題に対応してきた。今回、人口減少(需要減)のなか施設老朽化が進む(更新費用の増)という厳しい状況を踏まえて、上下水道事業が抱える諸問題の解決手法の提案と実践的活動を通じてサステナブルな上下水道に貢献するとして、経営コンサルティング部を設置することとした。新組織は、経営工学研究所とサービス開発部を統合し、4月1日に15名でスタートする。経営コンサルティング部では、①経営戦略の策定、②企業会計の構築、③広域化・共同化事業の企画・調整、④官民連携事業の調査・参画に対応する。

今後、上下水道事業の効率化に向けて多様な取り組みが展開される見込みであり、コンサルタントには、総合的な技術力と人材力が求められる。より主体的な取り組みの中でプレーヤーとしての活動を確立し、新しい産業の育成を目指したい」(平成30年2月28日取材)

聞き手:MizuDesign編集長 奥田早希子

※「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています

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