市民に分かりやすく情報開示を徹底

持続可能な水インフラと官民連携(14) 浜松ウォーターシンフォニー 最高執行責任者 佐藤丈弘氏に聞く(下)

上下水道では日本で初めてコンセッションを導入した浜松市の西遠浄化センター。運営から約1年を振り返り、運営事業者である浜松ウォーターシンフォニーの佐藤丈弘最高執行責任者に現状を聞いた。

地元雇用を創出し地域貢献

日本で初めて下水処理場の運営にコンセッションを導入した浜松市の西遠浄化センター

 ――運営体制は。

「約50人の社員で運営している。うち、ヴェオリアグループの下水処理場の管理経験者の出向が10数名、SPC構成会社であるオリックスからの出向が1名、浜松市管理の時から働いていた民間会社からの転籍者が約15名いる。そのほか、 2018年4月に採用した地元の転職者が17名おり、以前から働いている社員も含めれば過半数が浜松市民だ」

 ――地元雇用は地域経済への寄与も大きい。

 「新規採用はかなり苦労すると思っていた。上下水道では日本初のコンセッションということで知名度が高かったこともあるが、20年間の契約期間中は雇用が担保され、公共性の高い事業であることが、地元で働き続けたい人には魅力になったのだろう。

 今後はできる限りSPCからの出向者を出向元に還し、少人数の地元社員中心で運営していきたい」

 ――新規雇用が多いということは、下水処理の未経験者が多いということだ。社員教育は?

「ヴェオリアグループの研修制度を活用したり、自己啓発で下水道の資格を取得する社員には補助制度で支援している。

また、全従業員の力量能力評価を年に1回実施し、社員の現状の力量を見極めた上で、年間の教育訓練計画を立てて教育訓練を行っている。

設備分解点検等の技能研修も行っており、浜松市の職員や、市内の他の下水処理場を運営している競合他社の社員も参加している。市全体の下水処理の運営が効率化されることは市民の望むことであり、市への地域貢献としても重視している」

セルフモニタリングを徹底

 ――包括委託に比べ、コンセッションの難しさは?

「包括委託では公共が最終的な意思決定や対外説明を行ってくれるので、公共に甘える部分があった。コンセッションでは市は民間を監視するだけなので、例えば提出する書類にケアレスミスがあれば、組織体制や能力不足を疑われる。

包括委託の際は浜松市の職員も下水処理場に常駐しており、民間の社員と日々コミュニケーションを取ることができたが、今は常駐者はゼロ。月報だけがコミュニケーションツールとなるので、セルフモニタリングを強化し、提出前に書類を多重チェックするようにしている。

当社が立てる毎年度の重点目標でも、一丁目一番地にセルフモニタリングを位置づけている」

経営の透明化で市民理解を

浜松ウォーターシンフォニーの佐藤丈弘最高執行責任者

 ――民間が運営すると性能が悪化する、情報が秘匿されるなど、コンセッションに対するネガティブな報道や見方も多い。

 「民間を悪とするストーリーが出来上がった上での取材もあり、正直なところ報道を見て当惑することもあるが、できる限り情報を開示して、正直に対応してきたつもりだ。

 財務情報についても、民間としては財務三表を開示するだけで良いところを、浜松市からの要請を受けて費用の主要項目の公開を予定している。企業秘密にしておきたい部分でもあるが、市民により分かりやすくしたいという市の意向に賛同した。

 運営開始から約1年間で、立場はかなり公共寄りになった。経営を透明化した方が市民からも理解されやすいし、疑念も持たれないだろうから、この判断は間違っていないと思っている。今後もできる限り情報は公開していきたい」

 ――社員のモチベーション維持は?

 「様々な報道を受けて不安に感じる社員もいたため、4半期に1回は説明会を行った。報道の中には、誤解に基づく民間への批判も含まれていたので、正しい情報を伝えて不安を和らげるよう努めた。

初年度は台風で浜松市が大規模停電しても下水道機能を維持でき、コストダウンも実現した。財務成績が良く、特別賞与も出せた上で、市や市民の期待に応えられた。社員の不安は解消されている」

 ――コンセッションに対する市民の理解は深まったと感じるか。

「まだ十分とは言えない。外資系グループが運営しているので、外国人が働いていると勘違いしている人もいるのではないかと思うが、実際にはすべて日本人だし、地元の人が多い。現場や運営実績を見ていただくことで、反対派の人も納得してくれると信じている。

丁寧な説明を続けるしかない。下水道ふれあいイベントを開催したり、地元のお祭りにも積極的に参加していく」

「環境新聞」編集部、執筆:Mizu Design編集長 奥田早希子

第12回「コスト管理に早くも民活の成果」

「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています