行政的意識を持った企業が必要だ

持続可能な水インフラと官民連携(15)  クリアウォーターOSAKA 福井聡社長に聞く(上)

 「クリアウォーターOSAKA」(CWO)は、大阪市が100%出資する下水道運営会社だ。同市から下水道の維持管理を5年間で包括的に受託しているほか、大阪府河内長野市などからも請け負っている。社員は同市の元職員がほとんどだが、組織上はれっきとした民間企業だ。「官でもあり民でもある」という特殊性から、「官でもない民でもない」発想は生まれるのか。福井聡社長に聞いた。

クリアウォーターOSAKAの福井聡社長

民との意識の相違が官の不安要素

――下水道運営において、官直営の場合と、民間委託する場合の相違点はどこか。

「下水道法によって下水道事業の管理者は官に限定されているが、施設の老朽化や職員不足、技術の継承難などの課題に直面し、持続性を確保するためにこれまで以上に民の効率性が求められるようになった。とは言え官でも民でも適正に効率的かつ確実に維持管理する点は同じであり、やることに違いはない。

個人的な見解だが、違いがあるとするなら長年培われてきた中での意識面だと考えている。官は維持管理する上で市民の安全安心、快適性を第一に意識するだろうし、民は維持管理する“行為”そのものを適正に確実に、効率的にやることを意識するのではないか。

この意識の違いが、とっさの判断を変えることはあるかもしれない。例えば官は採算を度外視してでも市民の安全を最優先して投資判断をすることもあるだろうが、民はそうならないのではないだろうか。

維持管理の民間委託は進んできているし、民も経験やノウハウを蓄積している。コンセッションなど一歩進んだ性能発注への流れもある。民にかなりの自由度を与えようとする方向だ。

ただ、任される範囲や自由度が大きくなる程、維持管理という事実行為だけではなく、その目的とする浸水の防除や公共用水域の保全など、市民の安全・安心・快適な生活を守るといった公共性の高さを意識するようになるのではないだろうか。

今まで民は、官からの“こうしてください”という指示を受けて、維持管理の“行為”をやってきた。今後は官がその指示を出すのではなく “すべて民にお任せします”となっていく自治体が増えてくると考えられるが、お任せされても“どうすれば良いのか戸惑う”という民の声も耳にする。

その戸惑いの背景にあるのが官民の意識の相違であり、加えて民には官の公平、公正という仕事のやり方が企業活動とっては一見不合理とも見え、理解しがたいところがあるのではないだろうか。そこが官にとっても民にとっても不安要素になると考えている」

施設は“借りる”ではなく、“自分のモノ”の意識が必要

 ――意識が違うと、維持管理の“行為”はどう変化するのか。具体的には?

 「例えば包括的な維持管理を5年間契約で委託する案件の場合、受託した民は5年間の施設の機能保持を前提に想定した運転管理を考える。

対して官は中長期的な視点に立って、施設を長持ちさせよう、大事に使おう、あるいはこの際、更新しようとまで考える。自分で所有している施設で仕事をすることと、他人の施設を借りて仕事をすることの違いが、こうした意識や行為の違いを生むのではないだろうか。

 民にも契約期間後の意識、自分のモノとして大事にする意識、公共性の高さを意識することが必要だ。今後はその意識を持って業務にあたる民が信頼され、重宝がられるだろう」

 ――CWOなら官民双方の意識をもって管理できるのか。

「大阪市から転籍した社員がほとんどだ。大阪市の下水道の運転管理を受託しているが、社員は施設を“借りている”という感覚ではなく、自分のモノとして施設に愛着を持って使っている。

この意識を持ち、官の視点に立った仕事の進め方ができることは、純粋民間企業にはない当社ならではの強みだ。

しかし、保全が過剰になりすぎて効率性が落ちることは、企業経営の点からは許されない。両者をいかにバランスさせるかが今後の課題になる」

「環境新聞」編集部、執筆:Mizu Design編集長 奥田早希子

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「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています

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