タワマン2大問題と公共施設再整備は同時に解決できる

佐々木晶二 土地総合研究所専務理事・都市計画協会審議役

佐々木晶二 土地総合研究所専務理事・都市計画協会審議役

タワマン2大問題と公共施設再整備は同時に解決できる

近年、NHKや新聞などの報道で、大都市圏のタワーマンション問題の指摘が散見される。主な指摘は、

①将来の大規模修繕などでの意思決定の困難さ
②外国資本の購入による管理組合の運営への不安

などと思われる。

この問題意識は正しいものであって何らかの対応が必要だが、逆に、②にも示されている外国資本による大規模な投資対象となっている点については、むしろ、メリットとして考えてはどうだろうか。逆に、タワーマンションの課題を解決していきながら、一定の要件にあるタワーマンションの建設を促進することは、積極的に評価することができると考える。

以下、その切り口を整理したうえで、対応策を提案する。

近年、工事費、労務費等の高騰によって市街地再開発事業の採算性確保が極めて難しくなっている。最近では、中野サンプラザを建て替える事業の事例が報道されたところである。

一方で、大都市には、老朽化した図書館、小中学校などの公共建築物(中野サンプラザも含まれる)が大量にあり、また、鉄道駅周辺の駅前広場など公共施設の新規整備が必要なところもある。これらについては、財政難に苦しく市区町村単独では建て替えや整備が困難であり、市街地再開発事業で民間の力を活用しつつ対応することが、ほぼ唯一の解決策である。

この場合に、市街地再開発事業で公共建築物や公共施設を整備するのと併せて供給される保留床を売却して資金回収する必要があるが、最近では、日本に生活の拠点をつくりたい中国資本をはじめとする外国資本に、転売が容易である「区分所有建物としての住宅」、即ちタワーマンションに対して投資してもらうことが事業の収益性の確保のために不可欠となっている。この外国からの投資は、マクロ経済からみても、人口減少社会に突入している日本では明るい材料と考えることも可能である。

以上の切り口を前提にして、以下の改善策を提案する。

1)住宅については、容積率特例制度適用が通常認められるが、人口減少が進み、空家問題に苦しんでいる都市圏では、単純なタワーマンション(事業者が大規模な土地を取得してその土地に高層マンションのみを建築するタイプ)の建築に対して容積率特例制度を適用することはやめ、公共建築物や公共施設整備と一体的に行われる市街地再開発事業で供給されるタワーマンションに対してのみ、その特例制度を適用すること。

2) タワーマンションなど区分所有建物を購入する外国資本、または外国人に対しては、国内の連絡先を購入時に登録させ、その後に転売された場合にも外国資本等には同様の連絡先の登録を義務づけること。

3)タワーマンションについては、将来のマンション管理、大規模修繕などにあたり、一般人が想定できない費用がかかる(マンション管理組合関係資料の外国語への翻訳費用や外国人との維持管理方針への調整費用を含む)ことから、販売時に将来の費用負担の部分を購入者に負担してもらい、タワーマンションごとに寄金として積み立てること(その際、外国資本等の購入者には日本企業等に比べ、負担額を増額させること)。

以上の改善策を講じることによって、タワーマンションの将来への課題、特に外国資本等が保有した場合の課題に備えつつ、外国資本等の資金を公共建築物や公共施設整備に活用することができると考える。

外国投資というと、極端に毛嫌いし、または、心配するグループがあることも想定されるが、人口減少時代で国も地方公共団体も財政に苦しむ状況にあることを踏まえると、そのような偏見にとらわれず、外国投資をチャンスととらえて、より公共性の高いプロジェクトに対して、将来に禍根を残さない形で、外国資本等を受け止め、活用していくという柔軟な発想が今後一層大事になると考える。


佐々木晶二(ささきしょうじ)
土地総合研究所 専務理事・都市計画協会 審議役
内閣府防災担当官房審議官、民間都市開発推進機構都市センター副所長兼研究理事、国土交通政策総合研究所長、日本災害復興学会理事などを経て現職。被災市街地復興特別措置法立案、津波復興拠点整備事業等復興事業の予算要求立案など。