再考・上下水道事業の再公営化

持続可能な水インフラと官民連携(7)フランスの現状レポートより抜粋

2018年12月に成立した改正水道法の審議では、民間に水道事業の運営権を移管できるコンセッション方式への批判が、一般メディアを含め国会内外で巻き起こった。いわく「海外では民営化した水道事業が再公営化された」「民間化は時代に逆行する」。果たしてそれは真実なのか。EY新日本有限責任監査法人の福田健一郎氏がコンセッション先進国であるフランスの報告書を基にまとめたレポート「フランスの上下水道事業の再公営化・コンセッション化の状況について」は、日本であふれる“反民営化”論調に一石を投じる。同レポートの概要を紹介する。

水道事業の再公営化はコンセション化と同数

フランス生物多様性機構水・水生環境局(ONEMA)が2015年時点のデータを用いて作成した年次報告書(18年発刊)によると、10年から15年の間、公営からコンセッションへ、逆にコンセッションから公営に事業形態が移行された件数は次の通り。

フランスにおける水道事業、下水道事業および浄化槽事業の再公営化・コンセッション化の状況

●水道事業:公営化もコンセッション化も68事業と同数。ただし、当該事業の対象人口は、コンセッション化が111億人と公営化を約50万人上回った。

●下水道事業:コンセッション化が150事業、公営化が80事業。つまり、コンセッションの純増は70事業に及ぶ。また、対象事業人口で見ると、40万人分がコンセッションの純増にあたる。

水道事業において確かに68件の再公営化が記録されている。その一方で、公営からコンセッション化した水道事業が同数の68件記録されていることは、「民から公へ」の流れのみならず、「公から民へ」の流れも存在する。

また、全事業数(水道12万143事業、下水道1万5,154事業)に対する移行事業数の比率は、1%以下。全体から見れば移行事業はごく一部である。調査対象の期間が10~15年の6年間なので、以降件数は年間平均で11件程度、つまり、単年の移行件数の総事業数に占める比率は0・09%にすぎない。

民間の水道サービスを受ける人口が過半

「移行した事業」以外の事業の運営形態は次の通りである。

フランスにおける上下水道事業の運営形態(2015年データ)

●水道事業:事業数ベースでは公営が69%と多いものの、人口ベースではコンセッション方式の契約を通じた民間事業者からのサービス提供を受けている人口が59%と過半を占める。

●下水道事業:事業数(78%)、人口ベース(59%)ともに公営が過半を占める。

「公営=自治体職員による事業」ではない

日本では一般的に、上下水道事業において「公営」という場合には、公営企業として地方公共団体の内部で地方公共団体の職員により事業が実施されることを意味する。

一方、フランスでは大きく3つの形態に分類できる。

①自治体の部局として事業が運営される方式
②自治体が設立するものの自治体とは異なる法人である商工業的公施設法人による運営
③自治体が100%出資する会社による運営

フランスの主要都市における水道事業再公営化事例は、パリ市をはじめとして、いずれも商工業的公施設法人(地方独立行政法人のように公的主体だが法人格は自治体からは独立した法人における運営)または自治体100%出資会社によるものである。主要都市の事例を見る限り、再公営化が「自治体の部局における運営」を意味するわけではない。この点は、日本で一般的に「公営」が、自治体による直接的な運営を意味していることと対比的である。

また、フランスでは、上下水道事業は自治体による運営であったとしても、従事する職員については、原則として公務員は任用されず、自治体と職員の間では私法上の労働関係が成り立つという点も、わが国の上下水道の「公営」で一般的に想定される点とは異なるものである。

◇  ◇ ◇
次回、同レポートをまとめた福田健一郎氏をインタビューする。なお、同レポートがフランスを対象としたのは、公共サービスの再公営化の状況を研究したレポート「Reclaiming Public Services」に記録された上下水道事業の再公営化件数32カ国・267のうち、フランスが106事業と突出して多かったことに起因する。

「環境新聞」編集部、執筆:Mizu Design編集長 奥田早希子

※レポート「フランスの上下水道事業の再公営化・コンセッション化の状況について」(原典はONEMA2015年データ報告書2018年刊)

第6回「インフラと都市計画との連携を密に」
第8回「上下水道に経営人材を」

「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています

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