持続可能な水インフラと官民連携(1)

救世主はコンセッションだけか?

苦戦する水道コンセッション

 今年7月に閉会した国会に、水道法改正案が提出された。その目玉はなんといってもコンセッションの導入だ。しかし、昨年に引き続き成立することはなかった。

コンセッションというのは官民連携の形態の1つで、官が運営している事業について、施設の所有権は官に残したまま、運営権を民間企業に移管する仕組みである。民営化に近い運営形態と言える。

その対象は上水道事業にとどまらない。政府は「PPP/PFI推進アクションプラン」で10の重点分野と数値目標を定めており、すでに空港が6件、道路が1件の目標を達成している。

これに対し、上下水道の進捗は芳しくない。上水道は平成30年度までに、下水道は平成31年度までにそれぞれ6件と定められている。下水道では今年4月から日本初の下水道コンセッションによる運営が浜松市でスタートし、具体的検討は6件で行われたものの、目標には届いていない。上水道も大阪市や奈良市などで検討・準備案件があったが目標は未達だ。

水道法改正案が成立すればコンセッションの追い風になったであろうが、今のところ風が吹く気配はない。

海外では再公営化も

上下水道のコンセッションが進まないのはなぜか。その要因にはいくつかあるが、よく言われるのは、上水道については飲み水を民間企業に委ねることへの心理的抵抗感だ。一方の下水道では生活排水などの汚水と雨水の処理を担っているが、このうち汚水処理は民間に任せられても、雨水対策は官の施策であり、その切り分けが難しいなどの意見がある。

また、民間企業の経営に監視の目が行き届きにくくなり、料金が高騰するとの指摘もある。実際、パリ市では上水道を民営化していた1985年から2009年の間に3倍以上に値上がりした。その対策として実施したのが、再公営化である。こうした事例は世界的に増えており、00~14年の間に再公営化した事例が180件にのぼるとの調査結果もある。

課題解決のための官民連携

ただし、ここですぐさま「だから上下水道事業は官でなければ運営できない」と結論することは拙速にすぎる。官か民かの二元論からは、問題の本質は見えてこない。

そもそもコンセッションの議論が出てきた背景には、民間ノウハウやアイデアを必要とする差し迫った課題がある。主要な課題としては、①老朽化施設の更新投資の増大、②管路の耐震化など災害対策、③人口減少や節水機器の普及などにともなう収入減少、④職員数の減少、⑤独立採算制の維持だ。

上水道では、改良工事費が20年に7000億円を超えると試算されるがそれでも不足し、結果として管路の更新が進まず、12年の更新率はわずか0・76%。これでは、すべての管路を更新するのに130年もの時間がかかる。基幹管路の耐震化率も14年度からの3年間で2・7ポイントしか伸びておらず、16年度で38・7%と半分にも満たない。職員数も80年から10年までに3割減少し、更新など施策の着実な遂行を難しくする要因となっている。

こうした課題の解決策として期待されたのが、官民連携であったはずだ。

コンセッション以外の官民連携も道半ば

すでに浄水場の維持管理の約7割、下水処理場の9割以上が民間委託されているとされる。しかし、一部業務だけの委託であったり、あらかじめ仕様として定められた業務だけをこなす仕様発注と呼ばれる形態がほとんど。民間企業の自由度が低く、経費削減のインセンティブも働かないため、諸課題の解決にはつながりにくい。

そこで、複数の業務を一括して複数年で委託する「包括的民間委託」が推奨されるようになり、01年には国土交通省下水道部が「性能発注の考え方に基づく民間委託のためのガイドライン」を策定。求められる性能を維持するための手段は民間企業のアイデア次第という、自由度の高い契約形態も推奨された。また、02年には水道法が改正され、上水道施設の管理に関する技術上の事務を第三者に委託する「第三者委託」が可能になった。

これら多様な官民連携が上下水道の課題を解決すると期待されたが、コンセッションと同じく導入状況は芳しくない。下水処理場の包括的民間委託は18年1月で430件と全体の約20%。15年度の第三者委託は76事業と、全体の5・2%にとどまる。

こうしたこれまでに推奨されてきた官民連携の形態は、もっと浸透されていても良いはずだ。コンセッションだけが、上下水道インフラの持続可能性を実現できる官民連携ではない。

本連載では識者のインタビューを通して、水インフラの持続性と官民連携のあり方を検証していく。

「環境新聞」編集部、MizuDesign編集長 奥田早希子

「環境新聞」に投稿した原稿をご厚意により転載させていただいています

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