なぜ企業は、義務ではないCDP質問状に答えるのか
CDPというNGOはもともと、気候変動に対する企業情報を収集して公開するプロジェクトから始まりました。CDPは、プロジェクト名「Carbon Disclosure Project」の頭文字をとったものです。対象分野に水や森林などが加わったことから、プロジェクト名の略称であるCDPがそのまま組織名称となりました。
その名の通り「Disclosure」(情報公開)が主たる目的であり、その必要性は高まっているとはいえ、企業にはCDPの質問状に回答する義務はありません。それなのになぜ、前回紹介したように回答企業数が増えているのでしょうか。
それは、CDPが単なる情報公開プロジェクトにとどまらず、企業の回答を分析し、下記の9段階でランキングを行い、その結果もすべて公開するからだと考えられます。
CDPの対象となる企業はいわゆる大企業ばかりです。「世界的に販路を広げている優良企業に見えるのに、CDPウォーターに回答しないなんて、水に対する意識が低いんだ」などと、機関投資家のみならず、私たち生活者にも(もちろん私たちもCDPの公開情報にアクセスできます)思われてしまうかもしれない、そうならないように回答しなくては。。。という心理が働いても不思議ではありません。
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優等生の証し「Aリスト」日本23社で世界一
CDPウォーター2019で、ランキングの最上位であるAリストに認定された企業は、全世界で72社でした。なんとその32%に相当する23社が日本企業で、国別では世界一となりました。
2018年は全世界31社、日本8社でしたから、いずれも大幅に増えました。
実は2018年はAリスト数が大幅に落ち込んだ年でした。その一因として考えられるのが、質問事項の大幅な改定です。
この年、プロジェクト名が「CDPウォーター」から「CDPウォーターセキュリティ」に変わり、それまで以上に気候変動による洪水・渇水など水リスクがもたらす経営リスクへの深い理解が求められるようになったのです。
2019年にAリスト数が盛り返したのは、それから2年を経て各企業の水リスクへの理解や取り組みが進んだためではないかと考えられます。
ちなみに2017年と2019年のAリスト数を比べてみると、全世界では74社から72社で微減ながらほぼ同数でした。これに対し日本は12社から23社に倍増しました。この数字を見ても、日本企業がここ数年、水リスクへの対応に力を入れ始めていることが伺えます。
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(編集長:奥田早希子)