民間企業が上下水道を「運営」する民間活用について、多くの誤解が広がっていることが、中央大学の加藤裕之 研究開発機構教授による調査で明らかになった。
上下水道分野では、浜松市や宮城県、須崎市などで民間活用が進められている。人口減少が進むなか、老朽化したインフラを維持していくには、民間企業の経営ノウハウを活用することが欠かせないとされる。
一方で、誤解が解消されないままでは、必要な民間活用が進まず、将来的に上下水道サービスの継続そのものが難しくなる可能性もある。
「民間委託で料金が上がる」は制度上あり得ない
調査は世代別および都道府県別の人口割合を参考に、20歳以上の1,300名を対象に実施された。
その結果、民間活用に反対する人の54%が、「利益優先となり、料金負担が増える懸念がある」と回答した。
しかし、これは制度上の仕組みと一致していない。たとえ民間企業が運営に関与したとしても、水道料金や下水道使用料の改定には議会の承認が必要であり、民間企業だけの判断で値上げすることはできない。
むしろ民間活用の方が「透明性」が高い場合も
また、「行政運営の方が経営の透明性を確保しやすく、説明責任を果たしやすい」と回答した人は26%だった。
これに対し、加藤氏は、民間活用の方が契約内容や成果指標が明確化されやすく、結果として経営の透明性を高めやすい側面があると指摘する。
災害対応でも民間企業の強み
さらに、回答者の50%が「災害時には行政が責任を持って対応する必要がある」と答えた。
もちろん最終的な責任主体は自治体にある。しかし、実際の現場では、民間企業が持つ技術力や広域ネットワーク、機動力が災害対応で大きな役割を果たしているケースも少なくない。
加藤氏は、災害対応力についても、民間企業の強みを適切に評価する必要があると指摘している。
問われているのは「住民理解」ではなく「業界の説明不足」
こうした誤解が生まれる背景について、「住民の理解不足」と片づけるのは適切ではない。
むしろ、上下水道業界側がこれまで十分な情報発信を行ってこなかったことが大きい。
民間活用とは何か
自治体がどこまで責任を持つのか
料金はどのように決まるのか
こうした基本的な仕組みが十分共有されてこなかった結果、不安や誤解が広がった面がある。
人口減少と施設老朽化が同時に進むなか、上下水道の持続性をどう確保するのか。その議論の前提として、業界側には、民間活用に関する正確な情報を丁寧に伝えていく姿勢が求められている。
(編集長:奥田早希子)



