【鼎談】リスクマネジメントからリデザインするアフターコロナの下水道④

人・知識・技術をシェアリングしよう

コロナと気候危機を乗り切って下水道機能を持続させるには、従来業務の効率化だけにとどまらず、業務そのものをリデザインするくらいの新しく抜本的な対応が必要です。そこで本鼎談では、下記3名の方ににお集まりいただき「リスクマネジメントからリデザインするアフターコロナの下水道」をテーマに議論していただきました。全4回の最終回です。

加藤裕之氏 東京大学下水道システムイノベーション研究室特任准教授(元国土交通省下水道部下水道事業課長)
若狭公一氏 埼玉県下水道公社市町村支援課主幹
尾上裕二氏 浜松ウォーターシンフォニー最高執行責任者

(進行・執筆:奥田早希子・一般社団Water-n代表理事。2020年8月11日取材)


テーマ4「アフターコロナのカギはシェアリング」

技術者が広域的に勤務できるようになれば…

若狭公一氏 埼玉県下水道公社市町村支援課主幹

――そもそもコロナを含む複合災害に1自治体だけ、1社だけ、1拠点だけで対応するには限界があるのではないでしょうか。協働や連携も求められると思います。

若狭氏 広域化や共同化の必要性は以前から認識されていましたが、コロナ禍以降、市町村の担当者と話をしていると、いよいよ本気で進めなければならないという思いが伝わってきます。

現実問題として人が減り、自分たちだけで下水道サービスを持続することが難しいという現実を認めざるを得ない状況になったということでしょう。そうした中で、ウェブ会議やメールのやり取りでも意思疎通ができることが分かり、決裁だってPDFでできることが分かってきた。

私の仕事では、市町村の方々のとの「顔の見える関係」をキーワードに、足を運んで対面して信頼関係を築いてきました。信頼関係があればウェブ会議などでも十分に意思疎通ができ、実質的な距離をカバーできるので、担当者の居場所は関係なくなると思います。

まずはそういったところで、少しずつ市町村の方々とつながっていけたらいいと思います。

また、人材不足に関しては、技術者が広域的に働くことで対処できる可能性があると感じます。

例えば、自治体では技術職員、特に水質技術者の減少が著しい状況です。とはいえ下水道では処理場の有無にかかわらず、水質管理は重要で、その技術者不足は大きな課題となっています。

私は若い時に水質担当だったのですが、当時は出張先から電話で水質を確認したりしていました。今ならセンサーを使えばどこからでもスマホで確認して、指示を出せるはずです。

こうした仕組みが構築されれば、水質技術者がいろんな事業体と契約し広域的に働くことができるようになると思います。

――人材の広域活用という感じですね。

同業他社でも技術者融通が理想

尾上裕二氏 浜松ウォーターシンフォニー最高執行責任者

尾上氏 技術者の貸し借りができるのは、非常にありがたいです。基本は自社内で融通することでしょうが、緊急時であればライバル会社であっても技術者を派遣したり、派遣されたりするといった仕組みができれば理想です。

とくに水質管理に関しては、リーダーにしか判断できない事象もあります。そういう時、エリア内から経験者を派遣してもらえればありがたいです。

――地域内連携について、震災復興などでその効果が発揮された例はありますか。

加藤氏 東日本大震災からの復興の際、東松島市では水やエネルギーの復興を統合的に推進したと聞いたことがあります。通例なら水とエネルギーは縦割りで、個別に復興作業を行うと思いますが、人材が不足していたので一体的に行わざるを得なかったのです。

しかし、地域のインフラ復興に一体的に取り組んだことで、結果的には事業者間での連携が生まれ、効率的に復興を進めることができました。

ドイツにはシュタットベルケといって、水やエネルギー、プールなどを一体的に管理する地域インフラ会社がIT。今後は日本でも、公園と下水道、道路などの管理をまとめて1つの民間事業者が受託し、例えば道路管理をしながらマンホールの蓋を開けて下水道の管路管理もする、といった形態が出てきても良いと思います。

人や知識、技術をシェアリングしよう

加藤裕之氏 東京大学下水道システムイノベーション研究室特任准教授(元国土交通省下水道部下水道事業課長)

――業界の枠を超えた連携ですね。

加藤氏 1社単独で多様なインフラを管理できないのであれば、いろんな分野の会社や人が集まりITでつながった仮想の地域会社のようなものを作ればいい。

下水道の専門家が地域のリーダーになろうとしても効率的ではありません。まずは誰かと組んでやる。仮想会社ができれば、そこで広域的に人を融通していけるのではないでしょうか。

尾上氏 当社では自分の専門以外のことに視野を広げてもらうために、業務転換の取り組みを推進しています。やはり下水道の仕事は全体増の把握が必要ですし、相互の仕事内容が分かっていればジョブシェアリングができ、緊急対応にも生かせます。

加藤氏 地域や社会とのつながり、連携、そして人や知識、技術のシェアリングが、これからのリスクマネジメントのカギになりそうですね。

――ありがとうございました。

右から若狭氏、加藤氏、尾上氏、筆者

その1「人的リスクは甚大。だからこそBPRで業務を研ぎ澄ます」
その2「評判リスクから下水道従事者の人権を守れ
その3「リスクマネジメントはAI任せにできるか?

「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています