おしゃれで手軽じゃない雨水タンクなんて普及しない

編集長がやってみた、雨水タンク設置顛末記

我が家には雨水タンクがあります。6年ほど前に設置しました。設置した前年に自治会の副会長を務めており、その時の会長から「市から助成金を活用してほしいって要望が来てるんだけど、雨水タンク、設置しない? 設置数で市内1位の自治会を目指したいんだよね」と誘われ、そもそも水関連の記者として雨水を利用すべきという記事を書きながら自分では何もやっていないことを後ろめたくも思っていたので、二つ返事で乗ったのでした。

しかし、それからが大変でした。何が大変だったのか。そんなお話をいたします。

私の美的感覚に合うヤツを求めて…

 雨水タンクの設置を決意したら、まずはタンク探しです。ということで、休日にさっそく近くのDIYセンターへ行ってみました。

 うん、品ぞろえは少ないけど、確かにありました、雨水タンク。でも、違う。思い描いていたものと、まったく違う。いえいえ、こういう仕事をしているので、一般的な雨水タンクがどういったものかを知らなかったわけではありません。ですが、それは違うんです。

 “一般的な”と私が言っているのは、プラスチック製の、かわいげのない、事務的な色味で、業務用みたいなヤツのことです。そんなヤツを、我が家の庭に置きたくない。断じて置きたくない(メーカーさんには申し訳ありませんが…)。ですが、DIYセンターにはそんなヤツしか見当たりませんでした。

 そもそも一般家庭で溜めた雨水をどう使うかって、植木やお花への水やりがほとんどではないでしょうか。つまり、雨水タンクを設置しようとするご家庭には、お庭がある率が多いと推察されます。そして、定期的に散水をするご家庭では、何らかのガーデニングをされていることでしょう。樹木もお花もなければ、散水する必要はありませんからね。

 つまり、植木やお花があるお庭に、デデーンと業務用みたいなヤツが同居することになるわけです。日日草がほころぶテラコッタの植木鉢、ブルーベリーは濃い紫の実をつけ、その横に業務用みたいな雨水タンク。秋には金木星が芳醇な香りを放ち、冬には山茶花が咲き乱れる、その横に無粋な雨水タンク。そんなこと、私は許せない! 違和感ありすぎです。

 結局はネットで信楽焼の雨水タンクを探し当てました。

私の美的感覚に合った信楽焼の雨水タンク。別名、我が家のダム。

 しかしですね、これが高い。容量100リットルで16万2,000円。今、ネットで調べたら、一般的なヤツなら150リットルで4万2,000円というものがありました。100リットル当たりに換算すると2万8,000円ですから、信楽焼はその5.7倍です。

 ほかにもワイン樽のようなデザインなどおしゃれ度が高くスタイリッシュなタンクもありますが、やはり値段は少々お高めです。雨水タンクを普及しようと思うなら、まず手頃な値段でおしゃれなデザインのヤツを増やすことも大切ではないかと思います。

助成金の手続き…ややこしすぎるって

 さて、雨水タンクが決まったので、次は助成金の手続きです。A4の用紙に名前と住所を書いて、こんなの買いましたよ、と領収書と一緒に提出すればいい、くらいに思っていたのですが、甘かった。提出しなければならない書類は2種類もあって、添付資料もたくさん準備しなければなりませんでした。

 まず「助成金交付申請書」を準備します。容量や購入費用、助成申請額を記入していきます。それらの項目は報告する必要があると納得できるのでいいとして、メーカー名とか商品名まで書かせる必要ある? なにゆえ? そんな情報いる? なんだかなぁ、パンフレットめくるのさえめんどくさいなぁ、などと思いながら、仕方がないので間違えないように記入しました。

 次に「完了届」です。こいつが難関でした。申請書みたいに「ん?」と思うことを書かされるわけではないんですが、添付資料がべらぼうに多い。6種類もあるし。

 1、領収書の写し
 2、対象設備設置前の状況の分かる写真
 3、対象設備設置後の状況の分かる写真
 4、住民票
 5、雨水貯留槽の仕様が分かる書類
 6、申請者本人の宛先を記入し、82円切手を塗布した返信用封筒

 これ、完了届を先にきちんと読んでおかないと、2、でつまずくでしょ。設置前の写真ですよ。設置してから完了届を書き始めた人も、絶対にいるはず。そしたら、設置前の写真なんかあるわけがない。

私は読んでいなかった。フェイスブックに工事の様子をアップするために設置前の写真を撮っていたのでなんとかなりましたけど、書類手続きのハードル高すぎません?

6、に至っては「定型第1種の封筒」って指定されてるんですよ。小さすぎたら採用通知の書類が入らないんだろうし、定形外の大きい封筒だったら貼ってある切手の金額が不足する可能性もあります。そうならないように、封筒の種類も切手の金額も決めている。確かにそうすれば、行政手続きは煩雑にならずにすむでしょう。ですが、これってあまりにも住民目線に欠けてませんか?

それにですね、2種類の書類が事業者向けみたいで、なんとも可愛げがないんです。

事業者向けみたいで可愛げのない助成金交付申請書(左)と完了届(K市の委託先団体のサイトより)

そもそも「助成金交付申請書」とかいうネーミングからしてとっつきにくい。だから“書かされている感”が湧いてきて、せっかくの雨水タンク設置という一大イベントなのに、ちっとも楽しくありませんでした。

私が住むK市の雨水タンク助成金に関するパンフレットには絵も多く、かわいらしいキャラクターが語り掛けるデザインです。それにならって提出書類のデザイン性も高め、例えば親子で楽しみながら書類を書いたり、添付資料を準備したりするきっかけを作ることができれば、雨水タンクを設置するという一連の作業を家族で共有し、より思い出深いイベントになるのではないかと思います。

助成金額の計算(K市では購入費の2分の1、もしくは上限3万円)は算数の勉強に、書類への書き込みは国語の勉強にもなりますよね。これもまた、住民目線で見直せば、おもしろいアイデアが出てくるのではないでしょうか。

文句ばっかりで恐縮ですが(だって本当に大変だったから)さらに加えて、必要事項を記入した書類、添付資料は市の窓口(正確には市から委託された施設の窓口)に持参するか、郵送するしかありません。メールで申請できれば楽なのになぁ。

正直なところ、設置を決めてから設置完了までに「もう辞めたい」とは思わなかったですが、100回くらいは「めんどくさいよぉ」とつぶやきました。それでも途中で挫けずに書類と資料を準備できたのは、ひとえに私が水関係の記者をやっていて、やはり他の方に比べれば雨水利用に対する意識が強かったからです。そうでなければ、きっと途中で挫けていたことでしょう。

手続きを簡素化し、なおかつ手続きそのものをイベント化すること。それもまた、雨水タンクの普及には必要ではないかと思うのです。

雨水だって使いすぎはもったいない

  DIYで雨水タンクは無事に設置でき、書類や添付資料も無事に受理されて助成対象として採択され、ようやく我が家に小さいながらもダムが完成しました。我が家では夫婦で山登りを楽しんでいるので、植木やお花への水やりのほか、汚れた山靴を洗う時にも雨水を使っています。それでも春秋冬はほとんどダムが枯れることはありません。夏は朝と晩の2回、散水をするので、晴天が続くと枯れることがありますが、それも年に1,2回です。

 今年はゲリラ豪雨や台風も多かったですから、逆にタンクから雨が溢れてしまって、もったいないことをしたなと思うことが何度かありました。

雨水タンクのメリットは、行政にとっては、雨天時に下水道に流入する雨水量を減らせることが1つあると思います。最近は豪雨が多くなっていて、一気に大量の雨水が下水管に流れ込むと、さばききれずに溢れるリスクが高まっています。各家庭に設置した雨水タンクは小さいものですが、それが面的に普及すればそれなりのダムの機能を果たせるはずです。

降り始めの雨はファーストフラッシュと呼ばれ、これを溜めて下水管に流れ込むまでのタイムラグを作ることが水害を防ぐうえで重要になります。

それなのに、豪雨が降りだした時にすでにタンクが満水状態だった、なんてことがよくあります。これではタイムラグを作れません。かといって、天気予報を信じてあらかじめタンクの水を抜いておく、なんてことも怖くてできません。いつもじれったい思いでいます。何か良いアイデアがあれば教えてください。

一方、住民にとってのメリットは、水道代の削減が第一でしょうか。その他、災害時の消火用水やトイレ用水にも活用できることもいいですね。我が家でもさぞや水道代が安くなっただろう、と思われますか?

いえいえ。100リットル程度のタンク容量では、水道代に変化が見られるほどにはなりません。我が家では16万2,000円のタンクを買って、助成金3万円をいただいたので、実質負担は13万円強となるわけですが、投資回収はなかなかできそうにありません。

 それでも、蛇口にホースを付け、水道水をジャブジャブとまきまくっていた頃の「あーーーーっっもったいないーーー!!」という心理的負担というか後ろめたさというか、そういった何かが無くなり、ゆったりとした、ちょっぴり幸せな気持ちになれるだけで設置した甲斐はありました。

 雨水タンクを設置してみて分かったのですが、水道水を庭にまくことをもったいないと感じるのと同様に、雨水であっても決してジャバジャバと使おうとせず、やはり使いすぎはもったいない、大切に使おうという気持ちになったことには驚きました。

貧乏性と言ってしまえばそれまでですが、タンクの容量が決まっている、つまり使える水資源の量が決まっていて、その残量が目に見えて分かるので、もしかしたら蛇口をひねったら無制限に水が出てくる水道よりも、水資源の大切さを実感しやすいのかもしれません。

Mizu Design編集長:奥田早希子

公益社団法人雨水貯留浸透技術協会の機関誌「水循環 貯留と浸透」(2019 VOL.111)への投稿をご厚意により転載させていただきました。

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