ビル・ゲイツ氏がウンコ事情を変える

「生産力」と「浄化力」を持ったトイレを提案

 マイクロソフト共同設立者のビル・ゲイツ氏がウンコの改革に乗り出したとして、ちょっとした話題になっている。

 発端は11月5日にブログに投稿した記事だ。世界トイレの日である11月19日には「6つのトイレが世界を変えられる」と題して、2分12秒の動画をツイッターにアップしている。

 6つのトイレは、膜でウンコと水を分離して、水はフラッシュ水に再利用したり、ウンコから燃料を作ったりなどなんらかの「生産力」があり、いずれもその場で処理する「浄化力」を持っている。そして、汚水を下水処理場まで運ぶパイプも必要ない。現在の「ウンコを流す」だけのトイレとは一線を画す。

 ビル・ゲイツ氏の狙いは、このトイレで途上国の衛生問題を解決することだ。現在、世界では3人に1人がトイレを使えず、毎日1,600人が下痢性疾患で命を落としている(ユニセフ「世界トイレの日プロジェクト」)。かといって下水道の整備には時間もコストもかかりすぎる。生産力と浄化力を持ち、パイプも不要なトイレであれば、設置コストと運転コストの両面で低価格化が見込める。

一方、パイプレスは、日本の下水道にとっても福音になる可能性がある。日本国内には約47万㎞の下水管があるのだが、老朽化が進み、亀裂から土砂が入り込むなどして年間3,300カ所で道路陥没が起こっている。総務省によると、リニューアルのコストが2023年に0.8兆円程度、2033年には1兆円程度(処理場等も含む)もかかるとされ、その財源確保が下水道サービスの持続性にとって大きな課題となっている。そんな心配もビル・ゲイツ氏のトイレは一気に解消してくれる。

 ところで。下水道が集合型だとすると、ビル・ゲイツ氏のトイレは個別分散型だ。そこで思い出されるのが、家の敷地内で処理する合併処理浄化槽である。こちらも個別分散型であり、日本発の技術ということで英語でも「JOHKASOU」で通じる。富士山や日本アルプスの山小屋でも、バイオトイレなど個別分散型の処理が行われている。

 「都市部では下水道、地方では浄化槽」が現在の常識だが、もしかすると都市部でも個別分散型の時代が来る可能性があるのかもしれない。もちろん現在の技術そのままでは無理だろう。日本発の個別分散型の発想はそのままに飛躍が必要だ。

今の下水道をどうするか、今の合併処理浄化槽をどうするか。そう考えた先に、今のウンコ問題を解決する答えが待っているとは限らない。”今”を考えていても、その延長線上に必ずしも未来があるわけではない。未来は思いがけないところから現れることもある。そのことを、ビル・ゲイツ氏は教えてくれる。

(Mizu Design編集長 奥田早希子)

関連記事