第1回「ジャパンSDGsアワード」に12団体選定
これまでSDGsとは何かを解説してきましたが、それを理解するだけでは社会は変わりません。行動することが何よりも大切です。では一体、何にどう取り組めばよいのでしょうか。その参考となるのが、内閣総理大臣を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が行っている「ジャパンSDGsアワード」1)でしょう。平成29年度から始まった表彰制度です。受賞12団体の取り組みがSDGsのお手本になると思いますので、水とは直接的に関係のないものも含めてすべて紹介します。
第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞団体一覧1)
<SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞>
●北海道下川町
「下川町自治基本条例」に「持続可能な地域社会の実現」を位置づけ、森林総合産業の構築、地域エネルギー時給と低炭素化、超高齢化対応社会の創造に取り組んでいます。
持続可能な森林経営を中心に、適正な木材、木製品の生産と供給、森林の健康や教育への活用、未利用森林資源の再生エネルギー活用、再生エネルギー熱供給システムを核としたコンパクトタウンを推進しています。
健康な森林を維持することは、健全な水循環にもつながります。
<SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞>
●特定非営利活動法人しんせい
東京電力福島第一原子力発電所事故で避難した障がい者支援に取り組んでいます。13の福祉事務所が参加し、新商品のネット販売、分業体制で全国からの受注に応える仕組みを構築しました。
●パルシステム生活協同組合連合会
商品の背景を理解し、価格だけではなく社会性や環境面の価値による商品選択や、作り手の思いの共有、食糧廃棄の削減などに取り組んでいます。
モノづくりには必ず水が使われていますが、出来上がった商品を購入する段階では、それらの水を意識することはありません。商品の裏に隠された水のストーリーを意識した商品選択が進むことが期待されます。
●金沢工業大学
SDGsに特化した通年カリキュラムを実施したり、3つのキャンパスにSDGs推進拠点を設置したりするなど、SDGs達成に貢献する次世代リーダー育成に取り組んでいます。
SDGsの目標期間は2030年までです。次世代の人材育成は重要であり、大学など教育機関の役割はとても大きいです。SDGsを学んだ学生が、水ビジネスに携わってくれると心強いですね。
●サラヤ株式会社
「100万人の手洗いプロジェクト」として、商品の出荷額の1%をウガンダにおけるユニセフの手洗い普及活動の支援に充てています。また、生活用水が不足しがちなアフリカ諸国に、アフリカ製アルコール手指消毒剤を供給しています。
サハラ以南のアフリカでは、4人に1人しか安全に管理された飲み水を使用することができません2)。こうした状況を改善するとともに、消毒剤をアフリカ製とすることで、地域経済の循環にもつながるのではないでしょうか。1つの取り組みで複数の問題を解決することは、SDGs達成においてとても重要なことです。
<SDGs推進副本部長(外務大臣)賞>
●住友化学株式会社
環境面からSDGsに貢献する34製品・技術(受賞当時)を認定し、売上高目標を設定する「Sumika Sustainable Solutions」を推進しています。社員専用ウエブでSDGsの理解と主体的な取り組みを促進する「サステナブルツリー」では、11か国語によるSDGs解説漫画も配信しています。
機関投資家においては、SDGsへの取り組み姿勢を踏まえて投資先を選択する流れが強まっています(この話は別の回で詳しく述べます)。企業がまずSDGsの目標を掲げることは大切ですが、やはり行動が何より重要です。そのためには社員一人一人への浸透が欠かせません。
<SDGsパートナーシップ賞(特別賞)>
●吉本興業株式会社
多数の所属タレントを起用し、啓発アニメーションの制作・上映、啓発スタンプラリー、SDGsをテーマにしたお笑いコンテスト「SDGs-1グランプリ」、SDGs吉本新喜劇などを実施し、身構えずに楽しくSDGsに触れるきっかけを提供しました。
前回までに述べたように、SDGsはみんなのためのみんなの世界共通の目標です。誰もが何かに貢献できます。タレントを起用した啓発で、SDGsのすそ野が広がったのではないでしょうか。
●株式会社伊藤園
調達から製造・物流、商品企画・開発、営業・販売の一貫体制(バリューチェーン)全体でSDGsに取り組んでいます。
伊藤園は「伊藤園グループCSR憲章」を平成25年に、「伊藤園グループSDGs(持続可能な開発目標)推進基本方針」を平成29年8月に制定しています。CSR憲章の中で、水資源、森林の適切管理、生物多様性の保全に努めることが定められています。
●江東区立八名川小学校
持続可能な開発のための教育(ESD)の具体的な指導方法を開発し、実践しています。すべての教科・領域の学習を「環境・多文化理解・人権・学習スキル」という視点から整理したESDカレンダーは国内外で活用されています。
小学校での教育は、子供たちはもちろんのこと、親への波及も期待されます。
●国立大学法人岡山大学
SDGs達成の観点を取り入れた大学運営を進め、SDGs専門ホームページを整備しています。
岡山大学のSDGs専門サイトのトップページ
SDGsに関連した研究にも力を入れており、6月25日には、大学などの学術研究機関のためのガイドライン「SDGsを支援する:科学アカデミーのためのガイド」の日本語翻訳版を刊行ています。
●公益財団法人ジョイセフ
「妊産婦・新生児保険ワンストッププロジェクト」を実施し、質の高い母子健康サービスや情報提供に取り組んでいます。
●福岡県北九州市
公害克服の経験と、ものづくりのまちとして培った技術力を生かし、国際貢献や低炭素社会の構築に取り組んでいます。
日本四大工業地帯の1つである福岡県北九州市は重化学工業を中心に発展しましたが、一方で未処理の工業排水が流れ込んだ洞海湾は黄土色に染まりました。昭和40年代には“死の海”と呼ばれていましたが、下水道など排水処理施設の整備で公害を克服しました。この経験が世界の水問題の解決につながることが期待されます。
(「用水と廃水」8月号より)
(MizuDesign編集長:奥田早希子)
参考資料
1)首相官邸 持続可能な開発目標(SDGs)推進本部:第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞団体の取組紹介
2)(公財)日本ユニセフ協会:ユニセフの主な活動分野 水と衛生
←第2回「SDGs②:ギアアップして世界に追いつこう」
第4回「ESG投資①:いい会社は水の「質」と「量」に対応する」→
※本連載は月刊「用水と廃水」への投稿を、発行元である産業用水調査会のご厚意により転載したものです。