ビジネスチャンス到来! 全員で一歩前へ!

山口乃理夫 東亜グラウト工業代表取締役社長

山口乃理夫 東亜グラウト工業 代表取締役社長

ビジネスチャンス到来! 全員で一歩前へ!

日本は今、未曽有のビジネスチャンスを迎えていると思うのは私だけであろうか。

世界第二位の経済大国であった日本は2024年にはドイツに抜かれ世界4位となり、平均年収は韓国やスペインにも抜かれ、世界25位となってしまった。バブル崩壊後、「失われた30年」と言われる低迷期から未だ脱することができず、巷では自信なさげに肩を落としながら歩くサラリーマンの姿が目につく。

何故このような状況になってしまったのだろうか。私は大きく二つ要因があるように思う。

一つ目は日本人の多くがこのような状況に陥ってしまったことを「他責」で考えてしまっていること。政治が悪い、経営者が悪い、アメリカが悪い、中国が悪い等など。自分一人が頑張ってもどうせ何も変わらないからと選挙にも行かない。自分に責任の一端があるとは露にも思わない。一日一日ただ漫然と過ごす。「別に今困っていないから、このままでいいんじゃないの?」というのが、多くの日本人の本音なんだと思う。

もちろん一人で頑張っても何か変わるわけではないが、数千万人がこんな風に考えているのだから、事態が好転するわけはない。今の状況は(私も含めて)日本国民全員が招いた結果であるということを認識することからはじめないといけない。

二つ目は、日本人の最大の強みであった「勤勉さ」「努力」が、もはや過去の話になってしまったことだ。日本人は本当に勉強しなくなった。「働き方改革」も時短ばかりが騒がれているが、本来の「働き方改革」の意味は、働く人のニーズに応じた多様な働き方を実現し、生産性を高めることを目的とした取り組みのことを指す。

長時間労働の是正は、もちろん進めるべきだが、結果として浮いた時間をYoutubeやSNSをただ単に眺める時間に費やすのではなく、自己研鑽や異業種交流等に割いてほしい。仕事もしない、勉強もしないでは、各国に追い抜かれるのは当たり前だ。そろそろこの状況を全員で脱却しようではないか。

冒頭に戻ろう。なぜ私が、日本が大きなチャンスを迎えていると思うか。理由は3点ある。

1点目が今の日本の状況が戦後の経済復興~高度経済成長期の状況と非常に似ているという点だ。戦後1949年から20年強にわたり、日本円は1米ドル360円に為替固定されるとともに、労働賃金も安かったことで、国内製造業が大きく伸長し、輸出で大きく儲けた。

今の日本は円安の状況が継続しているとともに、残念なことではあるが、日本人の賃金が相対的に低くなり、G7で最下位、OECD加盟国38カ国中25位、時間当たり労働生産性では29位まで落ちてしまった。

この状況が何を意味するか。そう、まさしく戦後、日本が大きく経済復興を果たした時の状況と瓜二つなのだ。新しい産業は日本で立ち上げればいい。工場もそう。今でも日本のモノづくり力、現場力は世界に冠たる。そういう意味で私はメーカーのみなさんに大いに期待している。

2点目がAI、DXだ。世界に類を見ない少子高齢化が進む日本において、労働力不足を補うための、AI、DXの技術導入は必要不可欠だ。AI技術の開発は欧米先進国が最先端を走っているが、実はAIに関する国民の受け止め方は、日本と世界各国では大きく違う。

欧米ではAIは人間の敵のイメージ。ターミネーターのように人間社会を最終的にはAIが滅ぼしてしまうような「巨悪」のイメージでとらえている人が多い。一方、日本は鉄腕アトムやドラえもんのイメージ。悪い敵をやっつけたり、困っている人を助けてくれるような「善」のイメージを持っている人が多い。AIへの規制も世界各国と比べると強くない。

以上のことから、AI導入の地合いは非常に良好なのである。これからAI、DX革命が世界各国で始まり、ビジネスモデルは大きく変わる。日本はもっとも導入の必要性が高い国であり、導入の理解が得られやすい国でもある。

日本のみなさん、この機会を活かそうではないか。私はこと、インフラの分野においてはAI、DXをフル活用した省人化ビジネスモデルのデファクトをとり、日本に遅れて少子高齢化の時代を迎える欧米先進国に進出することを、オールジャパンで目指していきたいと、本気で思っている。

3点目が日本国内において、本格的な国際化がはじまったことだ。2024年の訪日外国人数は3700万人を記録。この数字はコロナ前の最高記録であった2019年を500万人上回る。インバウンドに対応するため、地方都市にいたるまで多くの投資が行われ、新たな雇用も生まれた。

私が期待するのは、インバウンドへの対応で、多くの日本人が持つ、いわゆる外国人アレルギーが払拭されることだ。真にボーダレスでダイバーシティ化が進まないと、鎖国体質のままでは本質的な改革はできない。私はこの鎖国体質が、日本経済停滞の主要因の一つだったと考えている。全員が国際人に代わるチャンスである。

チャンスは到来した。後は行動を起こすのみである。全員で一歩前へ!


山口乃理夫(やまぐちのりお)
東亜グラウト工業 代表取締役社長
1993年に積水化学工業に入社し、M&Aで手腕を発揮。仲間や部下から厚い信頼を集めるなど、一貫してヒト・モノ・カネという経営企画の視点で組織を成長させてきた経営のプロ。2017年に現職に就くと、7年間でグループ全体の売上高、営業利益とも2.4倍に押し上げた。