広報でインフラの「相棒」を増やそう

インフラの老朽化が進んでいるが、それを修繕したりリニューアルしたりするお金と人手は不足している。そんな業界の人の課題感や、生活者の不安をあおるようなニュースを見ていていつも思うのは、自分も一人の生活者として何らかの形でインフラに関わらないといけないということだ。

インフラは大きな構造物だから、生活者にできることは大きくも多くもないのかもしれないけれど、それでも「インフラは自治体のモノ。税金を払っているんだから、私が見ていなくても、勝手に適切に適当に管理しといてよね」ではだめだ。税金を払っているからこそ、その使い道、使い方をしっかりと見届けないといけない。

そういう意味では、インフラは自治体のモノでも、企業のモノでもなくて、自分のモノであり、みんなのモノでもある。インフラ機能を持続させていくには、みんなとの協働や共創、パートナーシップが必要だし、生活者にはインフラを自分のものと考えるオーナーシップが求められる。

でも、その言葉たちがなんだかビジネスライクでしっくりこない。この関係性を言い表す良い言葉を最近ずっと考えていて、ふと浮かんだのが「相棒」である。自治体も企業も生活者も、みんながインフラを持続する相棒だと考えると、今のところはなんか腹落ちしている。

一方、インフラ事業を担う自治体からとってみると、例えば下水道事業に生活者に関与してもらうには、老朽化などといった課題を知ってもらい、共有するための広報が必要ということになり、10年以上も前から下水道広報なるものの熱量が増している。

しかし、熱量が増すほど技術説明に溺れがちになるのは土木・工学領域の人たちの難あるところで、一方通行の「自己紹介」に終始して、結局何も伝わらないという例を五万と見てきた。

そこで「相棒」である。下水道広報の目的は下水処理技術を教育することではなく、下水道事業に寄り添ってくれる相棒を増やすことと考えるといいんじゃないか。相棒を増やそうとするなら、伝える内容や伝えるための言葉も変わってくるのではないだろうか。最近はそう考えるようになっていて、先日、それがあながち間違いではなかったと知り安心した。

アマゾン・ジャパンの元広報本部長であるAStoryの小西みさを代表の話だ。下水道広報プラットホームが主催した勉強会でこんな定義を教えてくれた。

アマゾン・ジャパンの元広報本部長であるAStoryの小西みさを代表

アメリカのPR協会(PRSA:Public Relations Society of America)によると「PRとは組織とその公衆の間で相互に有益な関係を構築する戦略的なコミュニケーションプロセス」ということだそうだ。そんな関係性にある人たちって相棒みたいじゃない?

日本では広報とPRが異なるものとされており、どちらかというと広報は一方通行的に広く報じるイメージだったが、日本広報学会が2023年6月20日に発表した「広報」の定義によると、PRと概念がかなり近くなったという。

いわく「広報とは、組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能」である。

双方向であり、社会的に有益で望ましい関係を構築することを目指している点は同じ。そこで構築された関係を「インフラの相棒化」などと呼んでみてはどうだろう。自治体や企業、生活者など関係者の距離がグッと縮まる感じがしないだろうか。

そして、広報は経営機能であるという。下水道界では総務部・課が広報を兼務する自治体や企業が少なくないが、むしろ社長直轄であったり経営企画にふさわしい。下水道広報にはこうした点の見直しも必要そうだ。

インフラ機能を維持するために、相棒を増やす。そのための下水道広報、インフラ広報であるべきだと提案する。

(編集長:奥田早希子)