コンセッションだけじゃない水道法改正の意義

急がれる水道事業の基盤強化


(photoAC)

 改正水道法が衆議院を通過し、参議院での審議待ちとなっています。今回の水道法の改正では「コンセッション」が注目されています。水道事業は現在は官が運営していますが、コンセッションでは水道施設の所有権は官に残し、運営権を民間企業に移管します。民間企業の参入を促すことで、水道事業が直面する老朽化や経営の健全化などの課題を解決する1つの手法として期待されますが、利益を出さなければならない民間企業に運営を委ねると水道料金が跳ね上がるとの声もあります。

暮らしに密着した水道料金がどうなるのか、という話題性からか、とかく水道法改正ではコンセッションの善悪を問う報道が多いと感じます。しかし、水道法の改正案をよく読むと、水道事業を持続させるうえで大切な見直しがなされていることが分かります。

 もっとも重要な点は、法律の目的である「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与する」ための手段が見直されていることだと考えています。現在は「水道を計画的に整備し、及び水道事業を保護育成することによって」となっていますが、改正案では「水道の基盤を強化することによって」となっています。基盤とは、老朽化や耐震化への対応、健全な経営、計画的な更新などです。日本の水道普及率はすでに約98%に達していますから、もはや作る時代ではありません。以前から「整備から管理へ」とは言われていましたが、筆者としては「持続」の時代への明確な方向づけがなされたと感じます。

 そして「持続」へのかじ取りが、その他の重要な見直しへとつながっています。

 その1つが広域化です。経営の効率化を図るため複数事業者が連携するもので、都道府県をその推進役にする条項が盛り込まれました。

 また“いまさら感”は否めませんが、水道事業者に対し、点検を含む施設の維持・修繕、施設の状態などを記した台帳の整備を義務付ける条項も盛り込まれています。努力義務ですが、水道施設の計画的な更新、収支見通しの公表も盛り込まれました。

 コンセッションも、水道事業の持続のための1手法として位置付けられたと整理することができます。自治体の関心も高まっています。

 その一つの宮城県では現在、上水道と下水道、工業用水道を一体的にコンセッションで民間企業に運営してもらう「みやぎ型管理運営方式」の検討を進めています。村井嘉浩知事も7月11日に同県が開催した「上工下水一体官民連携運営事業シンポジウム~水道の未来を考える~」に出席し、「みやぎ型管理運営方式の実現は、知事として4期目の政策の一丁目一番地だ」と述べ、意欲を見せています。

 大阪北部地震で古くなった水道管路が破損して水が噴き出すシーンはまだ記憶に新しいでしょう。日本全国で同じ光景を繰り返さないためには、水道事業の基盤強化はまったなしです。今回の水道法改正の審議をコンセッションの善悪を問うだけに終わらせず、水道の置かれている現状を見つめ直すきっかけにすべきではないでしょうか。

(MizuDesign編集長:奥田早希子)