上下水道施設で発生する汚泥の処理設備で知られる月島機械は10月24日、今年(2019年)4月から操業を開始した室蘭工場(北海道)において初出荷式を開催した。協力会社の社員など80名近くが出席し、半年という短期間での無事の出荷を祝った。
日本製鋼所との協業で新たなモノづくり
室蘭工場は海外市場も見据えた「新たなモノづくり」に挑戦し、実践する拠点であり、老朽化などの課題を抱えていた市川工場(千葉県)の機能を移設した。工場の稼働率の低下に悩んでいた日本製鋼所(JSW)の敷地に建つ。建屋をはじめ設備や人材などの資産を相互に活用しあう協業のあり方は、日本のモノづくりに一石を投じるとして注目されている。
冒頭で山田彰彦工場長があいさつした。「工場立ち上げの第1ステージ、出荷の第2ステージに到達した。品質、納期、顧客満足ともに市川工場と同等の成果だと自負する。さまざまな課題を克服してきた社員を誇りに思う。無事故・無災害も達成できた」とこの半年を振り返るとともに「110年のモノづくりの歴史を継承し、今後はJSWとの協業で効率的かつ安定したモノづくりを目指す」と抱負を述べた。
続いてJSW室蘭製作所の工藤秀尚副所長が「初出荷を迎え、感慨深い。本日を契機として次々と製品を作り、出荷されることを願う。月島機械との協業で事業を発展させる決意だ」と祝辞を述べた。
協力会社の第一日昭の栗山英明社長を交え、3名でテープカットを行い、初出荷を祝った。
海外民間向け乾燥機出荷
出荷したのは蒸気熱などを活用した乾燥機「スチームチューブドライヤ」(STD)で、化学品や食品、石炭など用途は幅広い。とくにペットボトルの原料であるテレフタル酸向けでは約5割の世界シェアを持つという。
今回の用途は明らかにしていないが、海外の民間企業向け。同社としては557台目となり、さらに室蘭工場で5台の納入残がある。
上下水道関連の引き合いも順調だ。道内では札幌市や恵庭市、さらに関東地方からも、下水汚泥や浄水汚泥の脱水機、乾燥機、焼却炉の受注が相次いでいるという。
地域活性化へ高まる地元の期待
JSWは東日本大震災以降に原発関連の受注が落ち、工場の稼働率低下に悩んでいた。従業員の一時帰休を実施したこともある。
一方、鉄鋼鋼の町として栄えた室蘭市だが、鉄鋼産業の衰退とともに人口が減少。地域活力が低迷していた。
そうした中での月島機械とJSWとの協業効果は、企業経営だけにとどまらない。すでに市川工場から、家族連れを含めて40名の社員が室蘭市に引っ越した。山田工場長も「住民票を移して室蘭市民になった」と笑う。
地元は歓迎ムードだ。税収も含め、地域全体の活性化においても今後の成果が期待される。