下水道の余剰熱で冬期の給食に野菜を
下水汚泥を発酵して得られたメタンガスによる発電設備
2017年度からは、余剰熱の農業利用にも取り組んでいる。同センターでは、水ingが下水汚泥を発酵して得られるメタンガスを使って発電事業を行っている。その発電設備から出る余剰熱を、同センター内に設置したビニールハウスの加温に活用する仕組みだ。
2018年2月から、加温に余剰熱、肥料に下水処理水という下水道資源のダブル活用で試験的に青コゴミを栽培したところ「味が濃くなった気がする」(同市職員)との好評が得られ、出足は好調だ。
同市では、霜が降りる冬期間に野菜の栽培ができなかったが、余剰熱を使えばこの課題を解決できる。実験用ビニールハウスで栽培を担っている庄内野の風ファームの加賀山雄取締役は「冬でも絶対に霜が降りない。普通は12月の第1週までがミニトマトの収穫時期だが、もっと伸ばせるかもしれない」と期待を寄せる。
冬期間の学校給食への野菜供給にも期待がかかる。鶴岡市下水道課の松浦正也氏は「余剰熱や処理水など質量ともに安定している下水道資源を有効活用し、冬に不足する野菜を給食センターに提供できる意義は大きい。今後、どの野菜が必要か、育てやすいかなど実証していきたい」と話している。
若者がUターンするまちに
同浄化センターの維持管理を担い、ビストロ下水道の実験にも関与する地元のメンテナンス会社・東北サイエンスでは、思わぬ波及効果が得られている。地元で働きたいという20代の若者がUターンで入社してくれるケースが出てきたというのだ。「中にはうちの社員の紹介で入社した子もいて、ビストロ下水道のような新しいことにも取り組めるおもしろい会社だと言ってくれたのかな、と思うとうれしいね」(長澤庄治代表取締役)。
下水道を核とした有機資源の循環が、人という資源の循環をも生んだということだ。
下水処理水による飼料用米の栽培は始まったばかりだ。そのゴールは、栽培した飼料用米で家畜がうまく育つこと。まずは今年秋の初収穫に向け、一歩を踏み出した。そして、その先にある地域活性化こそが、真のゴールとなる。