ESG投資、SDGsを追い風に民需開拓
総合建設コンサルタントの八千代エンジニヤリングは7月1日、水リスクへの対応をアドバイスする専門部署「水リスクマネジメント室(水リスクラボ)」を立ち上げた。10名を配置し、3年後に4~5億円の売り上げを目指す。
同社は公共インフラの調査・設計・計画に強みを持ち、これまで官需中心で事業展開してきた。その経験とノウハウを、民間企業の水リスク対応に生かす。ここ数年は民間企業からの受託案件が増えており、本格的に民需に乗り出すこととした。民間企業向けの専門窓口は同社としては初となり、新部署には新規市場の開拓に期待がかかる。
同社が民需市場に乗り出す背景には、1つには気候変動の影響で洪水や渇水など水リスクが高まっていることがある。サプライチェーンのどこかで洪水などが起こると、モノづくりがストップしてしまうため、企業が水リスクに向き合う姿勢は真剣さが増している。しかし、これまでに経験したことのない水リスクを想定しなければならず、対策に苦慮している現状がある。
もう1つには、機関投資家が企業の水に対するふるまいに目を光らせ始めていることがある。財務情報だけではなく、環境・社会・ガバナンスという非財務情報も考慮して投資先を選択するESG投資が活発になっている。
また、国連が定めた世界共通の目標「SDGs」においても、水は重要な1要素として位置付けられている。国際NGO・CDPによる企業格付けにおいても、水に特化して格付けを行うCDPウォーターが取り入れられた。とりわけこうした外圧を意識せざるを得ないグローバル企業では、水リスクへの対応が避けられない状況となっている。
これまでに、「工場で使っている地下水をこれからも使い続けられるのか」「汚れた水質の池が近くにあるが、製品のブランディングにマイナス影響があるのでは」「製造拠点の洪水や渇水リスクはどの程度か」といった問い合わせが企業から寄せられているという。
水収支を解析した「日本 水の地図」を強みに
同社は降水量や地下浸透量、蒸発散量、地形・地質、土地利用等から日本全域を対象に水収支を面的に解析して作った「日本 水の地図」を作成した。それらを基に、科学的エビデンスに基づき、企業に寄り添ったきめ細かなアドバイザリーを行えることは強みだ。水リスクや水環境を評価するソリューションも同時に開発しており、随時公表していく予定だ。
また、これまでに官需で築き上げたネットワークを持つことも強み。工場など拠点のある自治体と協働して水のアクションを起こしたい企業が多いという。今後はそうした企業と自治体との橋渡しも担っていきたいとしている。