ESGで行政コストを削減できるか

官と民の社会的な役割分担が変わるかもしれない

本気になった日本経済界

SDGsをゴールに据える。

5月31日の総会後の記者会見で、日本経済団体連合会の新会長に就任した中西宏明氏はこう述べた。その決意を裏付けるように、2018年度事業方針にもSDGs(持続可能な開発目標)の4文字が散りばめられている。

そして、SDGsをゴールとするなら、ゴールに向けていかに歩むべきか、それを示すアクション・プログラムには、環境・社会・統治のいわゆるESG要素が盛り込まれている。いよいよ日本経済界も本気になったという感がある。

SDGsは国連が掲げる世界共通の目標である。グローバル企業に目標達成の責務があることは間違いないが、それだけではここまで大きな波は起こらなかったのではないか。企業を突き動かす外圧は、国連が機関投資家にEGSを考えた投資を求める「責任投資原則」(PRI)を打ち出していることだろう。さらに、2015年に世界最大の年金資産規模を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名し、国内でのESG投資熱は一気に高まった。

ESG投資が企業のふるまいを律する

このことは、企業行動において機関投資家の視線を意識せざるを得なくなる、機関投資家の視線を意識して企業は自らのふるまいを律するようになることだと言える。

これまで企業行動を律してきたのは、1つには政府がある。排水基準など法による規制や監視を行ってきた。もう1つには住民がある。工場排水で川が汚されていないかなどを監視してきた。そしてESGに配慮する機関投資家が、3つ目の監視者になろうとしていると考えることができる。

(筆者作成)

3者のうち拘束力を持つのは政府だけである。しかし、投資を得たい企業は必然的にESGに取り組まざるを得ないのだから、その意味では機関投資家が実質的な拘束力を持つと言える。

そのことによって、政府・行政機関の役割を小さくできるのではないかと筆者は考える。例えば、水源林の涵養に企業が力を入れれば、あるいは、ゲリラ豪雨対策として工場に雨水貯留施設を企業が整備すれば、その分の行政コスト削減につなげられるのではないだろうか。

ESG投資はSDGs達成はもちろんのこと、官と民の社会的な役割分担の在り方をも変えるきっかけにすべきではないだろうか。こうした点からの検討も進んでほしい。

(MizuDesign編集長:奥田早希子)

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