水道管の劣化・漏水を診断する「親方AI」を開発

フジ地中情報 高齢化するベテラン調査員の経験則を活用へ

地下に埋設されていて目視できない水道管は、劣化や漏水の発見や対象箇所の特定、さらにはそうした事象が発生しそうな箇所を予測して先手を打って対策をとることが難しい。そこで近年は衛星やAIを駆使して見えない水道管を「見える化」し、劣化診断や漏水調査を行う技術の導入が進みつつある。 

水道管の診断・漏水調査で半世紀に及ぶ実績を持つフジ地中情報はこのほど、管種や敷設年数など水道管に関する情報のほか、自然環境や交通量、水圧など劣化に関係する物理的条件、さらには「この水圧がかかっていると漏水しやすい」などベテラン調査員ならではの経験則やノウハウも組み込んだAI劣化診断技術「FmapMIRAI」を開発した。 

同社が持つマッピングシステム「FmapBase」に登録されている全国の水道管や漏水などの情報をビッグデータとして活用し、漏水のしやすさや水道管の余寿命などをAIで予測できる。全国の情報を統合することでAIの頭脳を成長させ、予測確率を高めることができる。 

「FmapMIRAI」による漏水確率調査の結果(赤い水道管が漏水確率が高い)

水道管の情報だけでもAI診断は可能というが、同じ種類の水道管であっても自治体によって呼び方が異なり、例えばGX管がある市ではDGX管、別の町ではGXDIP管などと呼ばれることが多く、そのままではAIは別の水道管と認識してしまう。全国データとして統合するには統一する必要があるが、種類と呼び方が多様すぎて素人には容易ではないという。そこで同社のベテラン調査員の技術力を生かし、種類と呼び方を整理した。 

また、交通量や水圧など物理条件も加味しつつ、どの条件下で劣化しやすいかという、これもまたベテラン調査員に代々受け継がれ、蓄積されてきた経験則やノウハウもAIの頭脳に組み込んだ。水圧に関しては200台以上の測定機による実測値を使用しており、同社の担当者によると「測定地点の多さは当社ならでは」とのこと。これらにより劣化診断の確率が高まるという。 

これまでの漏水調査は水道管が埋設されている路上を調査員が歩き、音を聞いて漏水個所を特定するしかなかった。この調査も然りだが、その後のデータ分析、データを基にした漏水予測に至るまで、調査員の属人的なノウハウや技術が支えてきた。その調査員も多くが高齢化している。本技術開発の背景には、劣化診断の効率化もさることながら、属人的なノウハウが喪失するとの危機感もある。 

「FmapMIRAI」の肝はベテラン調査員のノウハウ

同社の担当者はベテラン調査員のことを親しみを込めて「親方衆」と呼ぶ。これに倣うなら、AIの学習量の多さと学習の速さ、管路診断のプロのノウハウを併せ持った本技術は「親方AI」と言えそうだ。