下水道施設が まちの賑わい創出の拠点に

官民連携で誕生した 東京都の三代目・銭瓶町ポンプ所

セレクトショップも入るビルの空調は下水熱を利用

令和4年3月、東京駅北側に位置する常盤橋街区に「銭瓶町ビルディング」が誕生しました。このビルには、「銭瓶町ポンプ所」や東京都下水道局の事務所が入居し、都心の下水処理を行う重要なインフラとして機能しています。

初代の銭瓶町ポンプ所が常盤橋に建設されたのは、昭和6年のこと。当時すでに市街化が進んでいた千代田区、中央区一帯の下水処理を担いました。その後、東京オリンピック開催に向けて、銭瓶町ポンプ所を含む街区全体が、日本初の特定街区として再開発されることに。人口増加や建物の高層化に伴う下水量の増大に対応するため、オフィスビルである「日本ビルヂング」と合築する形で再整備が行われ、昭和41年に二代目となる銭瓶町ポンプ所が誕生しました。

稼働から50年以上が経過した近年、目下の課題は、銭瓶町ポンプ所の老朽化でした。ポンプ所の再構築が必要でしたが、合築ビルのためにポンプ所単体で大規模な修繕ができないことや、工事中の下水処理機能をどう代替するかといった問題がありました。

解決の糸口になったのが、大手町一帯の再開発のために進められていた「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」です。下水道局は、このプロジェクトに街区の一地権者として参画し、民間の企業と連携しながら、銭瓶町ポンプ所の再構築に着手することを決定。再開発により生まれた用地に新たなポンプ所を整備することで、下水処理の機能を止めることなく、三代目の銭瓶町ポンプ所としての役割も果たす銭瓶町ビルディングが完成しました。平成29年から令和3年にかけて、実に5年にわたる大工事でした。

銭瓶町ビルディングには、これまでにない試みも実施されています。そのひとつが、下水熱を回収し、冷暖房用の熱 源とする空調システムの導入で、CO排出量の削減が期待 されています。また、建物1階の「ぜにがめプレイス」では、 下水道局とNPO法人大丸有エリアマネジメント協会とが 連携。下水道事業の情報発信や常盤橋街区エリアの賑わい 創出に取り組んでいます。ここでは地域産品セレクトショップの「アナザー・ジャパン」 が運営され、 併設カフェで下水道資源を活用して作られた食材「じゅんかん育ち」を使ったメニューも楽しめます。

下水道施設のこうした整備によって、今、新たに始動して いるプロジェクトがあります。それが、日本一の高さを誇るビル「Torch Tower」を中心とした新しい街区、「TOKYO TORCH」の開発です。未来のランドマークになる「TORCH TOWER」には、日本橋川の水質を改善するための雨水貯留施設が合築され、令和9年度に完成する予定です。人々の生 活を支えながら、新たなまちづくりや賑わい創出の一端を 担い、また、環境に配慮した設備の技術進化にも貢献する。 下水道というインフラは、私たちに寄り添いながらも、時代のニーズに合わせて進化を遂げているのです。


東京駅北側に誕生した「銭瓶町ビルディング」。

1階ぜにかめプレイスで、カラーマンホール蓋 の展示やマンホールカードの配布など下水道 情報の発信も行っている。「Water-n」も配布中。

『水を還すヒト・コト・モノマガジン「Water-n」』vol.13より転載(発行:一般社団法人Water-n)