【能登半島地震⑦】人口減少に向けて水インフラ防災とどう向き合っていくべきだろう?

この連載で復旧に向けた取り組みを紹介してきた矢先に豪雨が能登半島を襲い、大きな被害が出たことに言葉もありません。被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。そして一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

【これからのこと】

2024年1月1日、能登半島をマグニチュード7.6の地震が襲った。半島という地形、建物やインフラ設備の老朽化、命綱ともいえる道路の被害など、さまざまな要因が重なり、上下水道をはじめとする社会インフラの復旧には多くの困難があった。厳しい現場を乗り越える原動力になったものとは、いったい何だったのだろう。さまざまなシーンで復旧に携わった人々のリアルな行動や、思いを振り返ってみよう。(全7回)


ここまで復旧へと至る道を見てきたけれど、今後のインフラ復興はどのように考えていくべきだろうか?

「現在の災害査定による復興は、元通りのサイズに戻すのが基本。しかし、現状通りに戻すことが本当に必要なのかも考えなければなりません。人口が減っている地域なら浄化槽のような小規模分散型のインフラが適しているかもしれない」

そう話すのは、国土交通省の上下水道地震対策検討委員を務める、東京大学特任准教授の加藤裕之先生。ネットワーク型で大規模集中の下水道に比べ、個別型で小規模分散での処理を可能にする浄化槽を設置する方が効率的な地域もある。しかし分散することで管理が必要な場所が増えてしまう。ネットワーク型と個別、一長一短ある選択肢をどう選ぶかは、その地域の特徴や未来をどう考えるかも重要だ。

2011年の東日本大震災当時、加藤先生は国土交通省で下水道事業調整官を務めていた(中央)。被災地を巡り、国や自治体、企業とのパイプ役を務めた。写真提供:加藤裕之先生

「今回の震災を見ると、一自治体で上下水道を維持するのは難しいステージに入ったと思います。災害への備えや将来のインフラの考え方は、周辺地域や民間企業とも協力した“広域化・官民連携”で取り組まなければ解決は難しい」

今回の震災では、上下水道や道路などさまざまなインフラの「老朽化」という課題も浮き彫りになった。これは能登半島だけではなく、日本全国の多くの自治体が抱えている課題でもある。そうした中で、さらに未来の災害へも備えていくことはとても難しく思える。

「先進国で日本ほど高齢化や人口減少問題に直面している国はありません。災害対策も含めたこれからのインフラのあり方を提案すること自体が世界モデルになる可能性を秘めているかもしれません」

まだ誰も直面していない事態の打破が求められるこれからのインフラ。未来を担っていく世代には、これまでにない新しい発想やチャレンジが求められている。君たちは、未来をどんなものにしたいと考えるだろうか。

(終わり)