この連載で復旧に向けた取り組みを紹介してきた矢先に豪雨が能登半島を襲い、大きな被害が出たことに言葉もありません。被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。そして一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。
【防ぐ】
2024年1月1日、能登半島をマグニチュード7.6の地震が襲った。半島という地形、建物やインフラ設備の老朽化、命綱ともいえる道路の被害など、さまざまな要因が重なり、上下水道をはじめとする社会インフラの復旧には多くの困難があった。厳しい現場を乗り越える原動力になったものとは、いったい何だったのだろう。さまざまなシーンで復旧に携わった人々のリアルな行動や、思いを振り返ってみよう。(全7回)
防災・減災を目指して
復旧と復興の違いとは何だろう。いろいろな尺度はあるけれど、仮設住宅を復旧だとすれば、50年、100年先を見据えた住宅やインフラを作ることは復興といえるだろう。
道路の下に設置するボックスカルバート(下水道や共同溝などに使われる構造物)や、マンホールなど水インフラ整備に欠かせない製品を数多く扱うベルテクス。コンサルとともに破損した箇所の診断を行い、入れ替えが必要な箇所へは新たな製品を納品する。
製品の提案を行う「開発営業部」に所属する小林幹明さんは「復旧支援などの非常時には、常時よりも素早いスピードが求められます。通常なら確認の時間やプロセスを踏めるものも、非常時はスピード感を持って対応していかなければいけない。その点にはやはり緊張感があります」と語る。
次代を見すえた復興を
今回の震災を経て、メーカーとして変化を感じる部分はあったのだろうか?
「“今この時に対応しなければいけない復旧”に努める一方、今後の災害に備えていこうという未来への意識が強くなっていると感じます」
そう話してくれたのは入社2年目の古池真歩さん。
ベルテクスは、液状化によるマンホールの浮上を抑制する製品など防災・減災製品も多く取り扱う「防災メーカー」でもある。マンホールトイレ(マンホール上に簡易トイレを設置し、排水を直接下水道管に流すことができる設備)といった、災害時に必要な備えへの認知も高まってきているという。
「製品について、防災・減災の観点で考えていただける機会が増えたと同時に、自分自身も“防災・減災を支えるメーカーの一員である”という意識を強く持つようになりました」(古池さん)
災害大国である日本において、「災害にあった時、いかに素早く立ち直れるインフラにするのか」という視点が重要になる。つねに防災・減災を意識することは、未来を見すえた「復興」につながるはずだ。(つづく)