【能登半島地震①】水インフラサービスを途絶えさせない

復旧を担う人々の想い

2024年1月1日、能登半島をマグニチュード7.6の地震が襲った。半島という地形、建物やインフラ設備の老朽化、命綱ともいえる道路の被害など、さまざまな要因が 重なり、上下水道をはじめとする社会インフラの復旧には多くの困難があった。厳しい 現場を乗り越える原動力になったものとは、いったい何だったのだろう。さまざまな シーンで復旧に携わった人々のリアルな行動や、思いを振り返ってみよう。(全7回)


上下水道の一体的な復旧

日々使う水には、上水と下水がある。上水とは飲み水や生活用水など、使うために供給されるもの。そして下水とは、炊事やお風呂、洗濯、トイレなどで使い、排出する水のこと。これらの水は、上下水道というインフラによって循環している。

しかし、災害時に水インフラが被災すると、この循環が絶たれてしまう。命を繋ぐためにも、健康な生活を送るためにも、水インフラの早期復旧は欠かせないものだ。

今回の上下水道インフラの復旧では、これまでの震災と大きく変わった点がひとつあった。それは「上水道と下水道の一体的な復旧」だ。これまで、上水道は厚生労働省、下水道は国土交通省の管轄だったため、震災の際にもそれぞれ別々の対応になっていた。でも、2024年4月に上水道行政が国土交通省に移管されることが決まっていたため、今回は国土交通省が下水道だけでなく、上水道の支援にも携わることになった。

「水インフラの復旧は、主に自治体や民間企業が担います。では、国が何をするのかというと、正しい情報を集めて、皆さんに伝えるとともに、応急対応や復旧が円滑に進むよう、多くの関係者と調整することです」

国土交通省で上下水道事業調整官を務める堂薗洋昭さんは、国の役割についてこう説明してくれた。

毎日行われた会議は、情報共有のためだけでなく「地域の困りごとの吸い上げ」の役割も担っていた。写真提供:国土交通省

上水に遅れない下水の復旧を

上下水道においては、上水道の復旧の方が早く行われがちだ。しかし上水道だけが復旧しても、下水道が復旧していなければ使った汚水を流すことができない。

「上下水道の一体的な復旧で目指すべきなのは、上水道と下水道の利用を同時に実現することだと思います。下水道が不通で上水道が使えない、という事態はできるだけ避けなければなりません」

現場の声で一体的な復旧を後押し

そして上下水道一体的な復旧によって、ある「決まりごと」を変えることになった。

インフラが被災した場合、被害状況を調査し、応急復旧を行うが、地下にある下水道管を調査するには洗浄車やテレビカメラ車など、多くの特別な車両と人手が必要になるため、被害が大きいと時間がかかり、結果として復旧が遅れてしまいかねない。

「現地の支援自治体と相談し、上水道の復旧に遅れないため、テレビカメラによる調査を後回しにし、吸引車、洗浄車などによる流下機能の確保を優先することを現地から提案しました。国土交通省本省から現地の提案に沿った事務連絡を出し、応急復旧のスピードアップに取り組みました」

能登半島地震の復旧・復興は今も続いているし、課題も多く指摘されている。しかし、こんなふうに1分1秒でも被災地の暮らしを日常に戻していこうと努力した人々がいる。そんな人たち一人ひとりのさまざまな想いが、これからの強靭な水インフラを支えていくはずだ。(つづく)

「Water-n」vol.16より