高専生がインフラマネジメントのアイデアを競う「インフラマネジメントテクノロジーコンテスト2020」の交流会が2021年3月15日に3331Arts Chiyoda(東京都千代田区)で開催され、高専チームによるプレゼン、審査員による講評などが行われた。今後のインフラマネジメントを考える上でキーになるポイントをお伝えする。
■連載1回目:「インフラは大事」だけでは誰も行動しない
■連載2回目:スマホアプリで「防災行動」を進化させよ
■連載3回目:技術開発はゴールではない←今回はここ
ポイントその1
「地域」という視点
高専チームが提案したアイデアの多くが、自分たちの住む地域の中から課題を見つけ出すところが出発点となっていた。地域に根差した高専生ならではと言えるのかもしれないが、インフラを自分事化するうえでは非常に重要な視点である。
国土交通省は「インフラメンテナンス国民会議」を立ち上げているが、これも地域と協働したインフラマネジメントを実現したいがためのもの。その昔はちょっとした修繕なら住民が手掛ける道普請などがあった。それを現代に蘇らせ、橋普請や水道普請、下水道普請などに広げていくには、まずインフラを自分事化することが第一歩で、「地域」がその出発点になる。
「Think globally, Act locally」と言われるように、まず世界を見ろという人もいるだろう。しかし、筆者は「Think Locally, Act Locally」こそが大事だと思っている。自分のこと、家族のこと、自分の住む町のこと、地域のこと、隣町のこと、日本のこと、隣国のこと、世界のこと。思考の最初は実はとても卑近な事象の観察から始まり、そこに見出した課題を小さくてもいいから解決していく。するといずれその積み重ねが世界の課題解決につながっていくと思っている。
ポイントその2
当たり前の「デジタル」
これまたほとんどのアイデアに、スマホ、アプリ、AI、IoT、画像認証などのデジタル技術が活用されていた。まさにデジタルネイティブらしい。そして、彼らはそれらを単なる課題解決のツールにとどめず、情報共有や行動共有など「人と人とのつながり」、コミュニティの形成を目指しているという点がポイントだ。
連載1回目でも書いた通り、彼らのゴールはICTを導入することではなく、その先のコミュニティにある。これこそを今後のインフラマネジメントを成功させる本質と捉えるべきである。
ポイントその3
技術を「分かりやすく伝える」
これは高専生にはやや課題として残るポイントである。
下水処理工程から得られるメタンガスや藻類、中水、水流など様々な資源をフル活用するというチーム「Kure SWGT」(呉高専)のアイデアは、奨励賞を受賞したのだが、プレゼンでは専門用語が飛び交い、残念ながらアイデアの本質やその良さが伝わりづらかった。
審査員からは「これまで顧みられることの少なかった下水道だが、実はこんなにも宝の山だった。それらを活用することで地域にこんなにも価値を提供できるのですよ。という見せ方、説明の仕方をすると、アイデアの良さがもっと伝わる」とのアドバイスがあった。
ポイントその1、その2にも通じるのだが、技術の完成がゴールではなく、その技術で地域に価値を創造することがゴール。その意識をもつとプレゼンの内容も変わってくるだろう。実はこれは下水道広報などの取り組みにも当てはまることである。
つづく