人工芝の発生源の多くがスポーツ施設の可能性
陸上ごみの自然界への流出を科学技術で防止することを目指して京都大学の学生が設立した一般社団法人ピリカが12都府県・100地点で海洋などのマイクロプラスチックを調査した結果、最も多かったのは人工芝の切れ端であることが分かりました。全体の14%を占めていました。
調査した100地点のうち、98地点からマイクロプラが採取されました。このうち港湾の角など水の流れが少ない箇所では、マイクロプラが滞留してホットスポットになることも分かりました。全体平均の50倍以上となる100個/m3以上が集まる箇所もあったそうです。
今回の調査で最多だった人工芝は、100地点中の75地点で確認されました。中にはその割合が50%を超える河川も複数存在していました。関東・関西で比率が高かったそうです。
人工芝については、国内234カ所を対象にさらに詳細な調査が行われました。
その結果、スポーツ用途の施設の85%以上で人工芝が流出していることが確認されました。庭などスポーツ以外の施設で流出が確認できたのは23%であったことから、スポーツ用途からの流出リスクが大きいことが伺えます。
農村地帯ではプラスチックコーティング肥料も多い
また、田畑を背後に抱える地域では、プラスチックコーティング肥料(プラスチック製のカプセルに肥料を詰めたもの)のカプセル部分が多く確認されました。北陸では3.5%、石川県の雫川、富山県の小矢部川では60%以上を占めていました。
流出してから対策するより、流出させない対策を
海洋プラの多くが陸上から流出したゴミです。そして、その多くの受け皿となるのが下水道です。
下水道には、生活排水などの汚水と雨水を一緒に集め、下水処理場で処理する「合流式下水道」と、汚水だけを下水処理場で処理し、雨水は直接河川に排水する「分流式下水道」があります。
このうち合流式下水道であれば、水路に流出した人工芝などは下水処理の工程で除去されます。しかし、大雨時には処理工程が簡素化されてしまうので、除去できずに河川などに流出する可能性は高いです。また、分流式下水道では、小さなゴミを除去する機能はほとんど期待できません。
河川や海洋に流出してしまったゴミをどうするか、あるいは下水道施設でどう処理するかを考えるよりも、そこに至る前の経路でゴミを断つ方が合理的かつ効果的でしょう。
そのためには、マイクロプラの発生源や発生経路を知ることが不可欠です。今回の調査でそこが明らかになったわけですから、「流出させない」ための対策につながるものと期待できます。
ピリカでは今後、人工芝などを扱う企業や業界と問題解決に向けて連携していく方針です。
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