【PPP新戦略】社会インフラをワンストップで提供

JFEエンジニアリング、福田一美・常務執行役員に聞く

JFEエンジニアリングは2014年、同社初の浄水場の運転管理業務「箱根地区水道事業包括委託」を神奈川県企業庁から受託した。水道供給施設の運転や保守点検、更新工事の発注・監督などに加えて、窓口業務や料金徴収などのお客様対応も含まれており、国内初の事業全体の運営委託として注目された。その経験を、今後の上下水道PPPにどう生かすのか。福田一美常務執行役員(環境本部アクア事業部・PPP事業部担当)に聞いた。


福田一美氏(JFEエンジニアリング株式会社、常務執行役員)

上下水道の運転を通して地域を活性化

 ――箱根地区の水道事業が始まってからの5年を振り返ると?

「事業開始から2年目に大涌谷の火山活動が活発化した。。設備への影響はなかったが、給水車の手配や、職員の待機、初動対応の準備など、普通では考えられない得難い経験ができた。飲み水を住民に供給するという仕事、そしてライフラインの重要性を改めて認識させられた」

――見えてきた課題は?

「水源は湧き水が中心なので高度な浄化技術は必要ないが、山間地なので高低差があり、電気代はかかる。定住人口も少ないので、経営的には都市部よりハードルが高い。
しかし、管路の更新や設備投資も委託範囲に含まれ、4条予算(注・資本的収支。施設や設備への投資等)も計上できるので我々の自由度は高く、民間の発想を経営に生かしやすい。公共工事を年度末に集中させず、閑散期に行うことでスピードアップと効率化を図るなど工夫ができる。

責任は重いが、現場のやりがいはある。夏祭りなど地域のイベントにも積極的に参加し、地域の活性化を常に考えている。住民に評価されてこそ、顧客満足度につながる。我々の仕事の活性化が、地域の活性化にもつながるはずだ」

住民と接してきた経験を強みに

――「顧客」とは、発注元の自治体のことか、それとも料金を払う住民のことか。

「以前にゴミ焼却場の運転管理を行うグループ会社の社長を務めていた。そこではお客様は2通りあった。契約先の自治体と、ゴミを清掃工場に持ち込んでくる住民だ」

――上下水道の運転管理を受託する企業にとって、これまで顧客といえば自治体だったが、本来であれば上下水道を利用する住民こそが真の顧客である。地域に望まれる上下水道を実現するには、顧客=住民という発想の転換が求められる。

「清掃工場では、持ち込まれたゴミを計量する際に住民との接点が生まれる。ゴミ焼却場の運転管理で多くの実績を積んでおり、住民こそがお客様という文化がグループ全体に根付いている。進出したばかりの水道分野においても、住民と接しながら仕事をしてきた経験は強みになる」

人材の広域化で雇用維持

――プラント中心にEPC(建設工事請負)の歴史が長い御社にとって、運営も担うPPPの位置づけは。

 「下水処理場や浄水場では、プラント設備の新設はほとんどない。そこをカバーするのが海外であり、もう1つの柱が事業運営のPPPだ。

国内の上下水プラントは仕様書通りに建設すればよい場合が多いので、技術的リスクは大きくない。運転管理の受託も、これまでは人材派遣業に近く、発注者の指揮系統の下で動いていたにすぎない。

運営を担っていくには、いかに設備を長持ちさせるか、電力消費を減らすか、CO2発生量を減らすかなど、自ら考える会社が求められる。部品交換しやすい設備を選ぶことも必要だろう。

そのニーズを受け止められる会社になりたい。リスクはあるが、責任感を持って付加価値の高いビジネスを提供していきたい」

――上下水道PPPで重視する点は?

「経営が厳しい自治体が増え、大都市は別として、各自治体が個別の人材を確保できなくなる。対応策としてダウンサイジング、広域化、そして民間活用が進むだろう。

とりわけ人材の視点は重要だ。広域化の結果としてある町で水道事業が移管された場合、そこで働いていたのが官の職員なら別の業務につかざるを得ず、技術が失われてしまう。民間の社員なら別の場所の水道事業に配置転換すればよい。こうした人材の広域化が重要であり、実現するには多くの現場を持っておく必要がある。人材を流動化できる職場環境を整え、社員の雇用を守ることが重要だ」

大津市ガスコンセッションで水道も

――2017年に東京電力とのインフラサービス分野における戦略的アライアンスを締結した。異業種連携の今後は。

「東京電力とは産業廃棄物処理から着手し、上下水道など他のインフラについては検討中だ。
一方、先月、大津市がガス事業等の運営をコンセション方式で民間委託した。受託したのは大阪ガスグループで、当社も構成員として加わっている。附帯業務として水道の漏水等の緊急対応や施設点検などが含まれており、そこを当社が手掛ける。

上下水道は地域密着型の事業なので、地域ごとに最適なパートナーと連携していくことになる」

――電気、ガスなど他の社会インフラとの融合の可能性は?

「当社には上下水道をはじめ、ゴミ発電、バイオマス発電の事業もあり、石油のパイプラインや天然ガス受け入れ設備、LNGタンク、橋梁なども得意だ。社会インフラ系のビジネスの間口はかなり広い。ワンストップサービス的に対応できるのは、当社の強みだろう。作るだけではなく、そこに運営も加えられる」

インフラを創り、インフラを担う

 ――上下水道PPPの懸念要素は?

「民間に任せて大丈夫か、という議論がついて回る。民間が住民の不安を打ち消すことができていないからだ。地道に良いパフォーマンスを継続して出すことで、理解を得る努力を続けるしかない。

一方で、当社の強みをアピールすることも必要だ。長きにわたってインフラを作り、運転してきた。その歴史に加え、当社が手掛ける社会インフラには多様性がある。特に海外では、上下水道施設の設計から建設まで“プラントまるごと”を手掛けた実績も多い。フィリピンでは下水処理場で30カ所の実績があり、今もフィリピンで3カ所、ベトナムで2カ所、スリランカで1カ所で受注済プロジェクトが進行中だ」

――「作る会社から運営もする会社へ」の社員の意識改革は進んでいるか。

「社員もすでに、作るだけで済むとは思わなくなっている。運営まで担うという意識は根付いた。

1年前にはエンジニアリング事業のスローガンとして『くらしの礎(もと)を創る くらしの礎を担う』を掲げた。生活に必要な礎であるインフラを作り、それだけではなく運営もする。このベクトルをぶらすことなく、一丸となって社会インフラのワンストップサービスに磨きをかける」

聞き手:MizuDesign編集長 奥田早希子

※「環境新聞」に投稿した記事をご厚意により転載させていただいています

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