日本水フォーラムが主催する「水未来会議2018」が27日に衆議院第一議員会館で開催された。
同会議は、SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定、水循環基本法成立など水と深く関連する新たな潮流をとらえ、課題解決に向けたイノベーションへの貢献を目指すもので、今年で3回目の開催となる。
ESGの必要性をビジネスを通じて実感
会議冒頭に竹村公太郎・同フォーラム代表理事が、SDGsの達成に向けて「行政がリードすることも大事だが、民間企業にどのような役割があるのか、CSRの先にあるものの模索が始まった」と発言。持続可能な社会を実現する上で、とりわけ民間企業が大きな役割を担っているとのメッセージを発信した。
日本政策投資銀行(DBJ)の地下誠二常務執行役員は「持続可能な社会の再構築に向けた金融機関の取組」と題する基調講演で、すでに民間企業における持続可能性への挑戦、言い換えればSDGs、ESG課題への挑戦が、投資行動や金融取引の場面に表れていることを指摘した。
例えば日本における石炭火力発電については、「ウィズアウトコールだ」(脱炭素化)ということで、もう数年前からヨーロッパ系の投資家からの投資が集まりにくかったという。「ESGの必要性をビジネスを通じて実感している」(地下氏)
逆に投資を集めるうえでESG経営が有利に働く場面も多くなってきているようだ。例えば、同社が取り組む評価認証型融資(環境格付け融資)だ。当初は企業に受け入れられないのではないかと懸念したそうだが、2017年3月末時点で960件、融資額1兆600憶円にまで成長した。環境格付けの良い会社の金利が下がる、ということも実際に起こってきているという。
また、環境・社会に配慮した不動産をグリーンビルディングとして認証しており、その認証不動産を2割ほど組み込んだリートが水面下で増えていたり、社会責任SRI投資の世界市場が急伸している現状を説明。これらも、投資家が持続可能性やESG課題の解決につながる企業や案件に投資したいという意志の表れだと指摘した。
ヨーロッパに比べ、日本はSDGsやESGの経営への取り込みが遅れているとの指摘もある。しかし、グローバルに見れば、すでにSDGs、ESGが資金調達に影響を及ぼし始めている。日本企業もこの流れに乗り遅れてはならない。
多方面の連携が欠かせない
では、日本企業はSDGs達成に向けて、何ができるのだろうか。この点について、パネルディスカッションで議論がなされた。
例えばSDGsの「ゴール6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」については、上下水道をはじめとする水インフラの技術やノウハウの海外移転による貢献がある。しかし「貧国国、低所得国においては投資回収が容易ではなく、民間企業が手を出しにくいのが現実だ」とファシリテーターの滝沢智・東京大学教授から問題提起された。
これについて、水道システムやパイプを手掛けてきたクボタの岡部洋氏は「海外の低所得国はもちろんだし、国内でも地方の小規模な水道事業など、本当に困っている人達に水をいかに供給するか。日本の製品そのままではコストが高すぎるし、まだビジネスモデルが見えていない。これからの検討課題だ」と発言した。
日本企業がSDGsの達成に貢献し、ビジネスとしても成立させ、その活動を持続させていくには、岡部氏が指摘したようないくつかの課題を乗り越えていかなければならない。その際、電通の池田百合氏が「1社だけで取り組んでいたらシュリンクしやすい」と指摘したように、それら課題を1社だけで乗り越えることはほぼ不可能だ。「企業同士を数社、あるいは産官学をつなげ、一緒に取り組むことで、活動が続き、大きくなっていく」(池田氏)。同業他社、異業種、NPOなど多方面との連携が、今後は欠かせない。
翻ってこの日の同会議を振り返ってみると、行政、議員の視点が欠けていたこと、上下水道インフラに偏重していたことは残念だ。日本にはものづくりや文化、地方創生など幅広い場面で「水」が活躍し、水の制御技術やノウハウが蓄積されている。今後はまちづくりにおいてもSDGsの視点、ESG課題への向き合いが求められることは必至であり、より高い目線から日本に潜在する水に関する技術や取り組みを掘り起こし、有機的に連携させていく必要がある。