対談:下水道×都市計画=未来デザイン②

再構築の模索

これから人口が減り、まちのあり方は変わっていく。下水道のあり方も変わっていかざるを得ない。どう変わるのか、どう変えるのか。もっと重要なことは、きちんと変わっていけるのか。2回目は将来ビジョンに関する議論をお届けする。

岡久宏史氏 日本下水道協会理事長(右)
宮崎市都市整備部長、京都府土木建築部下水道課課長、国土交通省下水道部長、日本下水道新技術推進機構専務理事、積水化学工業官需事業企画開室長などの要職を経て現職

佐々木晶二氏 日本災害復興学会理事(左)
内閣府防災担当官房審議官、民間都市開発推進機構都市センター副所長兼研究理事、国土交通政策総合研究所長などを経て現職。被災市街地復興特別措置法立案、津波復興拠点整備事業等復興事業の予算要求立案など


見えない将来ビジョン

岡久氏 これから人口が減っていく中で、いかに下水道を再構築していくか、その哲学と具体的な手法がない。住民が減少する地域は下水道区域から外して浄化槽に転換する、くらいの発想しかない。

下水管の改築は耐用年数50年を基準として入れ替えているが、今後将来にわたって50年も使われるのか。それを見極めるには、50年くらい先のまちの長期的なビジョンがないと。しかし、それが都市計画からは見えてこない。コンパクトシティーの構想だけでは不明瞭で、各まちの将来構想を時系列で見たい。

佐々木氏 都内の街中でも、郊外でも、ランダムに空き家が出ている。都市計画が思っているほど、郊外の高齢者サービスも交通も悪いエリアで集中的に空き家が発生するわけではない。

都市計画の手法では、作ることは抑制できても、抜けるところは止められない。状況を見ながら対応するしかないのが現状だ。そういった中でも、下水道の現場では一生懸命に都市計画サイドと打ち合わせ、調整を進めていると感じる。

人口密度が減ってきた時の対応として、行政が大きなインフラはもう作らない、でも浄化槽にして個人任せにするわけでもない。浄化槽も市町村管理型にして、コミュニティプラント(小規模な下水処理場)などを組み合わせていく。そういうフレッキシブルなやり方を下水道の世界に取り込めないだろうか。

交通の世界ではLRT(次世代型路面電車システム)が事業として苦しいと言われていて、それは融通が利かないから。1回敷設すると、まちの使われ方やニーズが変わっても対応できない。

下水道も同じこと。下水管はつながないけど生活排水処理は公共が支えていく、ということはできそうな気がする。

岡久氏 汚水処理の一元管理ができれば、生活排水処理システムの再構築が計画的かつ効率的に取り組むことができる。

ただ、浄化槽も必要な手段であるが、資源やエネルギーの循環という視点も大切にしたいと思っているのだが…。

岡久氏

“生活排水”は一元管理へ

佐々木氏 “下水道はでかいから人が減ってきたら撤退する”では夢がないし、公共による大規模な集合処理から、いきなり個人任せでは極端すぎる。スタッフや事業者も抱えているし、その資源を生かして公共が関与する中間規模の処理場はできないか。コミュニティ単位での処理は、行政ニーズもありそう。

岡久氏 あれは個人の浄化槽、これは公共の下水道という発想ではなく、あれもこれもみんな広い意味で下水道だっていう目で見れば変わる。“下水道”という名前に拘るつもりもない。

佐々木氏 汚水処理をシステムとして一元化するために、民間活用するのも面白いし、日本下水道事業団(JS)のような公的な組織が担って、商売にするのも面白い。いずれにしても随意契約になるので、なんらかの国の位置付けがいる。

岡久氏 下水処理の広域化は大いに賛成ではあるが、実際どこまで有効に機能させるかには課題がある。仮に3つの市が広域化して管理の委託を一業者に行わせるとした場合、3市それぞれに発注権限があって、入札制度も異なるわけで、一業者とそれぞれが契約するのは難しいのではないかと危惧している。

佐々木氏 例えば東日本大震災の被災地では、区画整理の発注事務から全部をUR(都市再生機構)が自治体から受託して、個別事業者に発注した。

岡久氏 同じようなことがJSでもできる可能性はある。

佐々木氏 被災地でのURみたいに、まずはフィーゼロでやって見ては? 国費を出さないといけないが、まずは公共団体の負担が少ない形で初めてみればどうか。

岡久氏 これからは下水道をマネジメントするという発想が大事だ。広域化の支援、民間委託のアドバイスなど、JSがコーディネートして複数市町村を集め、知恵を出し、それに対してフィーをもらうスキームも考えられる。

海外市場で技術者を育成、とはいうけれど…


佐々木氏

佐々木氏 下水道を作ったり管理したりする技術を残していかないと、再構築もできないし、次に大災害が起きたら復旧もできない。今はそんな危機的状態だと思う。打開するには仕事をしないといけない。それが国内でやり切れないなら、海外しかない。

海外にはニーズがある。都市開発に比べ、下水道は再生水利用やエネルギー利用など技術レベルが高いのは強みだ。でも、管理技術が地方公共団体にばらけているので、海外市場まで勝負にいけない。

都市開発におけるURのような組織がないのは厳しい。JSなり何なりが、まずは国内で広域管理や一元管理の仕事をやって、そのノウハウを使って海外の仕事をしてほしい。

水ビジネスの海外輸出は国が支える仕組みを作らないとうまくいかないが、下水道は国の直轄ではないから苦労しいている。国の技術支援団体は必要だろう。

岡久氏 今の海外展開のやり方には問題が2つある。

1つは海外に出られる企業を育ててこなかったこと。プランニングはコンサル、建設はゼネコン、機械はメーカー、維持管理は維持管理会社、と縦割りの発注になっている。海外では土木・建築工事だけでは儲けにくいから、メンテナンスまで長期的に受託して儲ける仕組みが有効だと思っているが、そのような実績がある企業が育っていない。まずは国内で建設とメンテナンスを一括で発注するなどして企業を育成しないと、海外で戦えない。

2つ目は、海外に見合った技術を提供する必要があることだ。日本の技術は高度すぎるし、その分コストもかかると言われている。また、下水道システムの構築手法も発想を変えてみてはどうだろうか。

例えばある企業では下水管の内部で汚水を処理する技術を開発している。インドやベトナムのように生活排水が未処理のままで排出されているような地域では、下水処理場と管路網が完成するまでの長い期間を現状のままで待つよりは、まず管路を整備して、中級処理でもいいから下水管内で浄化し、時間を掛けずに劣悪な水環境をある程度改善する。その後、下水処理場を建設し既に布設した管路網を活用して高級処理を実施する。この様な方法だと短期的に膨大な建設費も必要とせず効果も早く得られる。

日本と同じように、処理場と管路を常に一体で考える必要はない。

佐々木氏 それは素晴らしい技術ですね。メンテナンスは?

岡久氏 ほとんどノーメンテナンスと聞いている。また、ある企業では、我が国では使われなくなった散水ろ床法を改良し、ローコストで省エネタイプのシステムを開発し、ベトナムで採用されている。このように、輸出先の経済力に見合った技術提案がいる。

また、我が国においては技術者を育てないといけない。しかし、市町村では難しいと思っていて、民間企業に頼らざるを得なくなる。だから民間企業に頑張ってほしい。そのためには、儲かるビジネスモデルが必要で、民間企業にとって下水道の仕事が魅力あるものとしなければならない。

佐々木氏 政令市はどうか。

岡久氏 政令市は、個人的な思いとしては、包括委託とかコンセッションなどの民間活用ではなく、直営でやって技術者の確保と新たな技術者を育てて欲しいと思っているのだが…

つづく
(進行:MizuDesign編集長 奥田早希子)
(撮影:佐々木伸)

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